論壇

個別指導とは一体どういうものであろうか?

上尾市 小橋 一成
はじめに
 個別指導と聞くと、まず頭に浮かぶことは、非常に精神的な圧迫感があり嫌なことであるという印象を持つ。これは当たり前で、個別指導の実態をほぼ知らないことに起因する。審査・指導対策部部長として長年改善運動を進めてきた経験から個別指導について解説したいと思う。
 まずは、個別指導を実施する相手方の陣容として、指導医療官及び厚生局・県が委嘱する指導医、厚生局・県の職員である。そして医師会・歯科医師会に依頼した立ち会人等が複数人。
 指導を受けるこちら側は、保険医の先生一人である。まさに多勢に無勢、圧倒的に不利な状況である。ここで大切なことは、こちら側に味方してくれる人権を守る強力な味方が必要なこと。そして、録音することだ。
 埼玉県では、過去にしばしば起きた個別指導に起因する悲劇を反省して、帯同という、保険医の人権を守る弁護士を同席する権利を全国で初めて認めさせた。すなわち、弁護士は人権を守る砦となってくれるのである。

個別指導と法律 行政手続法について
 個別指導は、行政手続法に基づき行われるものである。行政手続法には「行政指導の内容が、あくまでも相手方の任意の協力によってのみ実現されるものであることに留意しなければならない。行政指導に携わるものは、その相手方が行政指導に従わなかったことを理由として、不利益な取り扱いをしてはならない」と書いてある。すなわち、個別指導が保険医の任意の協力に基づくものであることが明快に示されている。
 指導を行う方も受ける方も行政手続法に基づいて個別指導が行われることを強く認識すべきだが、カルテの中身をどうしようかと心配している保険医には、法律的なことは、全く頭の中に入っていない。そのためにも、法律の専門家である弁護士の帯同は必要だと考える。

指導大綱について
 個別指導は具体的なやり方を規定する指導大綱に基づいて行われる。その中には「懇切丁寧に指導する」との記載もある。
 たとえ、どんな間違いがあっても、保険医が指導の内容を十分に理解できるよう、具体的かつわかりやすく説明し、診療報酬の適正な請求を行うための助言や改善点を示すようにという趣旨である。すなわち教育の場だと考えてみてほしい。私たち保険医は教えてもらう立場なのだと。

日ごろの注意点
 さて、医療の中身についてはどうだろうか?個別指導において医療内容に関する質問については、保険医自身が説明しなければならない。その中でも、一番の気がかりは自分では気付かない、カルテの記載内容が不十分、ときには誤りがあることだ。
 普段より診療内容の向上に努めること。的確な診断を行い、病気の治療に専念すること。不正確なことや誤った治療、医療はしないこと。間違いがあれば、すぐに見直して修正する。そして、大切なことはカルテの記載を正確にできるだけ多く行うこと。カルテの記載がない場合、医療行為自体がなかったと思われることもある。返戻や減点には再請求を行う習慣も必要で、同じ間違いをしないということも大切である。
 実は考えてみればわかることだが、我々保険医は今まで一度も公的な機関から保険診療について教育を受けたことがない。個別指導がその場だと考えてはいかがだろうか?そして、一度教わったならば、再び間違いを犯さないようにすることが大切だ。

おわりに
 ホームページ等で宣伝している弁護士事務所の帯同費用はかなり高額である。協会が紹介する弁護士の費用は5万円とそれほど高くはないので、指導に選定されたらぜひ帯同を利用してほしい。最後に、自分の医療を守るのは、自分自身であり、かつこの国の法律であるということを留意してほしい。

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