論壇
医師の「人生100年時代」
富士見市 里村 淳
私は大学を卒業して今年で51年になります。私の母校は卒業して50年経つとクラス全員を招待してお祝いしてくれます。昨年の9月にその招待を受け、理事長、学長をはじめ大学の幹部職員に迎えられお祝いの言葉をいただきました。招待といっても、クラス会としては手ぶらで行くわけにもいかないので、大学に相応の寄付をしたことは言うまでもありません。
なぜ、卒後50年の祝いか。老後の仕事への意欲について医師のアンケート調査があります。それによると、年を取っても仕事は続けたいが量は減らしていきたい、75歳までは仕事から全く離れたくないという回答が多かったことを考えれば、卒業して50年(75歳前後) というのは確かに意味があるかもしれません。そのタイミングで大学がお祝いをするというのは、医師としての現役生活への慰労かもしれません。
また、「満20年以上在籍し、満77歳に達した会員」を表彰する団体もあります。勤務医の場合、定年は65歳。その後の勤務はアンケートの通りのようです。したがって、70歳代の後半に入ったあたりが医師の最終定年となるようです。しかし、現実にはさらに仕事を続けている医師は少なくありません。その中には辞めたくてもなかなか辞められない人がいることも確かです。辞めたら医師がいなくなる地域というのは埼玉県にもあります。医師の世界では80歳を過ぎてもまだ働いている人、辞めることができない人が大勢いることは他の職種と比べると驚きです。それだけ元気な人が多いということでしょうか。「医者は長生き」と言われることがありますが、独自に医師の寿命について調べてみました。縁起でもない話かもしれませんが、興味深い結果が得られましたので報告します。
母校の同窓会名簿で卒業年をもとに物故会員、生存会員の推移を調べたのです。厚生労働省がネットで公表している国民の生存曲線では60歳を過ぎる頃からゆるやかに低下していくのがわかります。同窓会名簿で調べると、生存会員は75歳までは意外と80%台を維持していますが、75歳を過ぎると急激に低下していくことがわかりました。85歳頃になると50%になります。男子の平均年齢が79歳くらいといいますから、医師の長寿を裏付ける結果となっています。このデータをクラスメートに見せたらバカ受けして拡散し、学長の耳にまで入ったというので、医師の健康寿命については皆関心があるようです。
「人生100年時代」と言われていますが、これは英国ロンドンビジネススクール教授のリンダ・グラットン氏が長寿時代の生き方について述べた著書『LIFE SHIFT(ライフ・シフト) 人生100年時代の人生戦略』(東洋経済新報社、2016年)のなかで提唱した概念です。書店に行くと「老後の生き方」に関する啓発本が並んでいます。高齢社会をビジネスチャンスと捉えている人も多く、いろいろな「エンディング・ノート」なども売られています。
しかしこの「人生100年」説に対しては結構距離を置いている人が多いようです。私の周囲の人や患者さんの話を聞いていると、長生きすることを無条件に歓迎しているわけではないように思います。長生きしてそれなりの老後を過ごすには健康であることが大前提ですが、健康で長生きしても良いことばかりとは限らないことは言うまでもありません。
心療内科の外来では、年配の患者さんはこれからの人生の不安を訴えることが多く、理由はどれも共感できるようなものばかりです。誰でも加齢による衰えは避けがたく、また、孤独も同様です。旅行中に出会ったある高齢の女性の「私は1人暮らしですが、孤独死など別に怖くありません。でも、生きている限り時間を無駄には過ごしたくないです」という言葉が印象的でした。
なぜ、卒後50年の祝いか。老後の仕事への意欲について医師のアンケート調査があります。それによると、年を取っても仕事は続けたいが量は減らしていきたい、75歳までは仕事から全く離れたくないという回答が多かったことを考えれば、卒業して50年(75歳前後) というのは確かに意味があるかもしれません。そのタイミングで大学がお祝いをするというのは、医師としての現役生活への慰労かもしれません。
また、「満20年以上在籍し、満77歳に達した会員」を表彰する団体もあります。勤務医の場合、定年は65歳。その後の勤務はアンケートの通りのようです。したがって、70歳代の後半に入ったあたりが医師の最終定年となるようです。しかし、現実にはさらに仕事を続けている医師は少なくありません。その中には辞めたくてもなかなか辞められない人がいることも確かです。辞めたら医師がいなくなる地域というのは埼玉県にもあります。医師の世界では80歳を過ぎてもまだ働いている人、辞めることができない人が大勢いることは他の職種と比べると驚きです。それだけ元気な人が多いということでしょうか。「医者は長生き」と言われることがありますが、独自に医師の寿命について調べてみました。縁起でもない話かもしれませんが、興味深い結果が得られましたので報告します。
母校の同窓会名簿で卒業年をもとに物故会員、生存会員の推移を調べたのです。厚生労働省がネットで公表している国民の生存曲線では60歳を過ぎる頃からゆるやかに低下していくのがわかります。同窓会名簿で調べると、生存会員は75歳までは意外と80%台を維持していますが、75歳を過ぎると急激に低下していくことがわかりました。85歳頃になると50%になります。男子の平均年齢が79歳くらいといいますから、医師の長寿を裏付ける結果となっています。このデータをクラスメートに見せたらバカ受けして拡散し、学長の耳にまで入ったというので、医師の健康寿命については皆関心があるようです。
「人生100年時代」と言われていますが、これは英国ロンドンビジネススクール教授のリンダ・グラットン氏が長寿時代の生き方について述べた著書『LIFE SHIFT(ライフ・シフト) 人生100年時代の人生戦略』(東洋経済新報社、2016年)のなかで提唱した概念です。書店に行くと「老後の生き方」に関する啓発本が並んでいます。高齢社会をビジネスチャンスと捉えている人も多く、いろいろな「エンディング・ノート」なども売られています。
しかしこの「人生100年」説に対しては結構距離を置いている人が多いようです。私の周囲の人や患者さんの話を聞いていると、長生きすることを無条件に歓迎しているわけではないように思います。長生きしてそれなりの老後を過ごすには健康であることが大前提ですが、健康で長生きしても良いことばかりとは限らないことは言うまでもありません。
心療内科の外来では、年配の患者さんはこれからの人生の不安を訴えることが多く、理由はどれも共感できるようなものばかりです。誰でも加齢による衰えは避けがたく、また、孤独も同様です。旅行中に出会ったある高齢の女性の「私は1人暮らしですが、孤独死など別に怖くありません。でも、生きている限り時間を無駄には過ごしたくないです」という言葉が印象的でした。