声明・談話

年頭所感

 皆様、新年明けましておめでとうございます。
 昨年12月1日から保険証の新規発行が停止、替わって患者の資格確認は主にマイナ保険証ですることになりました。埼玉県保険医協会は会員の皆様方と「保険証存続」を求める請願署名を集約し、会員アンケートを発表しながらマイナ保険証システムの脆弱性や政府の説明するメリットに誇張虚偽が含まれることを訴えてきました。
 多くのメディアや世論、総選挙で当選した衆議院議員に今の保険証を残す必要性が届き始めましたが、保険証を残すには至りませんでした。保険証は国民全員が申請することなく必ず届けられる証明書であり、保険診療が提供されるために必要不可欠なものです。政府が推進するマイナ保険証が自らにより申請・更新しなければならないことと決定的な違いがあります。国民に申請が求められるのは新設された「資格確認書」も同様です。無保険状態の国民が多数生じないよう、政府は当面の間、自動交付することを保険者に求めていますが法的な根拠はありません。保険証が法令により保険者に対して交付義務を課していることと異なります。
 12月の保険証新規発行停止の本質は、国民が受ける医療の基本原理に自己責任化をもたらしたことといえます。マイナンバーカードの普及、デジタルの推進という不確かな目的のために、私たちの社会のセーフティーネットを失わせることになりました。
 国民皆保険制度が我が国に創設され60年以上も守られてきたのは、私たちが保険医として地域医療を担ってきたことはもちろんですが、保険証が全ての国民に届けられるよう社会インフラが守られてきたことにも要因が見い出せます。あまりに当たり前であったことが転換することで、将来的にどのような影響が生じるのか、現時点では想像ができません。保険証が果たしている役割を考察も不十分なままに廃止した政府、政治の責任は重大です。今後はスマートフォンに対応するカードリーダー導入など開業医に負担をもたらす施策も続きます。協会ではこれからも「保険証復活」要請をはじめ現場目線で活動をしてまいります。
 医療分野全体では、昨年の診療報酬改定に象徴されますが、政府は地域と国民の健康を守っている役割を評価することなく、あからさまな冷遇策を断行しています。デジタル施策を強要する一方で、スタッフの賃上げ原資を手立てすることもありません。閉院・廃業を判断する開業医がさらに増加していきそうです。また「偏在対策」と称し自由開業医制などにも規制をかけ、かかりつけ医構想を通じて医療業界の管理強化をさらに進めようとしています。
 地域の医療体制を守っていくためには、私たち医療界が、国民、住民とともに、これまでよりも一回り大きく発信していくことが必要な状況にあるといえます。
 厳しい中でしたが、昨年埼玉協会は、保団連とともに厚生労働省要請を実施し、個別指導は行政手続法の適用下で実施されるとの回答を確認したり、マイナ保険証の利用勧奨は保険医の義務ではないことを確認するなど、保険医の権利を守る行動を実践してきました。
 2025年はさらに厳しい1年に違いありませんが、開業保険医の声を発信して協会活動を邁進させてまいります。引き続きのご協力をお願いし、年頭の挨拶といたします。
2025年 元旦
埼玉県保険医協会理事長  山崎 利彦

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