声明・談話

【理事会声明】
生活保護基準の引下げを違法とした最高裁判決を踏まえ、政府には至急、
生活保護利用者への謝罪と補償に応じることを求めます

2025年7月30日
埼玉県保険医協会理事会
 厚生労働大臣が2013~15年に生活保護基準を最大10%引下げたことについて、これを違法と訴える訴訟が全国で起こされ、このうちの名古屋訴訟、大阪訴訟の最高裁判決が6月27日言い渡された。最高裁は厚生労働大臣の裁量の逸脱や乱用があったと判断し、引下げ処分の取り消しを認める画期的な判決を言い渡した。
 最高裁判決は、厚生労働大臣が個人の尊厳の基盤となる「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」(憲法25条1項)の重要性を軽視し、生活保護法8条2項によって考慮すべき事項を考慮せずに行った引下げを違法として、これに基づく引下げ処分の取消しを認めたものであり、人権擁護という司法の職責を果たした画期的な判断として高く評価する。
 一方で、驚くべきことに政府は最高裁判決により生活保護費の引下げが違法と判断されたにもかかわらず、生活保護利用者に対して未だに謝罪をしていない。政府は司法の判断を軽視していると言わざるを得ず、ただちに違法行為により被害を受けた方々に謝罪すべきである。
 また、引下げが行われた期間に生活保護利用者の「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」という極めて重要な権利を侵害した事態を深刻に受け止め、現在も全国の裁判所に係属している同種訴訟について全面解決を図り、原告以外の生活保護利用者に対しても引下げ前の基準によって受けるべきであった生活保護費との差額を支給するなど必要な補償措置を直ちに講じるべきである。
 違法な生活保護基準の引下げは、2012年の総選挙で自民党が「生活保護給付水準の10%引下げ」を公約に掲げたことが背景にある。社会保障費削減のために制度改悪を強行することは、先の通常国会で議論された高額療養費制度の見直しなど、公的医療保険制度においても行われている。今こそ社会保障費抑制政策を転換し、誰もが安心して暮らせる社会保障制度の構築を目指すべきである。
 当会は、政府に対し本判決を踏まえた生活保護利用者及び元利用者への補償措置を直ちに実施するよう求めるとともに、憲法で保障された「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」が大臣裁量によって侵害されることがないよう、関連する法整備を強く求める。
以上

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