論壇
20年後の歯科
三郷市 土田 昌巳
2024年3月に厚労省から発表した「令和4(2022)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」によると全国の届出「歯科医師数」は10万5,267人で、前回(2020年)と比べると2,176人、2%減少した。また、人口10万対歯科医師数は84.2人で、前回に比べ1人減少している。
1982年の統計開始以来、増加し続けてきた歯科医師数は初めて減少に転じた。「コンビニより多い歯科医院、歯科医師過剰で稼げない不人気職種」という風評に晒されてきたが、ここにきて「将来は歯科医師が不足する」という声もちらほら聞こえてきた。
私が大学を卒業したのは1990年。バブルの恩恵は数年ほどで、長く続く日本経済のデフレ、低迷の始まりであった。では、歯科が潤っていた時期はいつ頃だろうかと考え、「パノラマ買ってハワイに行こう」と週刊ポスト誌に揶揄された1980年頃の状況を調べてみた。パノラマ点数は650点(現在のパノラマ・デジタル402点)になり一気に各歯科診療所にパノラマX線撮影装置が普及した頃、歯科医師数は5万3602人、人口は約1億1,706万人で人口10万対歯科医師数は45.8人であった。
今から10年後、20年後はどの程度の人口対歯科医師数になっているのだろうか。概況の「性、年齢階級別にみた医療施設に従事する歯科医師数」を用い、70歳未満の人数で考えてみたい。
一般的に歯科医師は70歳前後で引退するケースが多いとされている。2024年の調査によると、廃業した歯科医院の代表者の平均年齢は69.3歳。もちろん70歳を超えても現役で診療を続ける歯科医師も多いと思うが、思考実験にお付き合いいただきたい。
概況の70歳未満の歯科医師数は2022年8万9,086人、2032年(10年後)6万5,520人、2042年(20年後)4万3,122人。
新規参入としては歯科医師国家試験合格者を加える。2025年(第118回)の合格率は70.3%(全体)と12年ぶりに7割を超えたのが明るいニュースとして報じられた。過去11年間の合格者数は1,969~2,136人で平均2,041人。約2,000人とすると10年で2万人、20年で4万人が加わるとする。すると70歳未満の歯科医師数は2022年8万9,086人、2032年(10年後)8万5,520人、2042年(20年後)8万3,122人と、冒頭で述べた減少傾向が続いていくことになる。減少率は10年で4%、20年で6.7%。
日本の総人口は2004年をピークに減少し続けており、2100年には明治時代後半の水準の4,771万人(中位推計)になるといわれている。この変化は、千年単位でみても類を見ない極めて急激な減少。2022年は1億2,494万7,000人(実績)であるのに対して、2032年1億1,603万2,000人(厚労省将来推計人口(2002年推計))、2040年1億1,284万人(厚労省将来推計人口(2023年推計))。減少率は10年で7.1%。18年で9.7%になる。歯科医師数は2042年であるが、人口は2040年を準用させていただく。人口10万対70歳未満歯科医師数は2022年71.3人、2032年73.7人、2042年73.7人と極端な変化がないことがわかる。少なくとも1980年代の実績に戻ることはなさそうである。
これからの20年、歯科医師の減少は続いていくが、それを上回る人口減少により人口10万人に対する歯科医師数は70歳以上を加えても約80人前後で安定していくと推測する。もちろん歯科医師を希望する若者や、歯科大学が減ったり、歯科医師の働くフィールドが広がれば相対的に不足していくだろう。
1982年の統計開始以来、増加し続けてきた歯科医師数は初めて減少に転じた。「コンビニより多い歯科医院、歯科医師過剰で稼げない不人気職種」という風評に晒されてきたが、ここにきて「将来は歯科医師が不足する」という声もちらほら聞こえてきた。
私が大学を卒業したのは1990年。バブルの恩恵は数年ほどで、長く続く日本経済のデフレ、低迷の始まりであった。では、歯科が潤っていた時期はいつ頃だろうかと考え、「パノラマ買ってハワイに行こう」と週刊ポスト誌に揶揄された1980年頃の状況を調べてみた。パノラマ点数は650点(現在のパノラマ・デジタル402点)になり一気に各歯科診療所にパノラマX線撮影装置が普及した頃、歯科医師数は5万3602人、人口は約1億1,706万人で人口10万対歯科医師数は45.8人であった。
今から10年後、20年後はどの程度の人口対歯科医師数になっているのだろうか。概況の「性、年齢階級別にみた医療施設に従事する歯科医師数」を用い、70歳未満の人数で考えてみたい。
一般的に歯科医師は70歳前後で引退するケースが多いとされている。2024年の調査によると、廃業した歯科医院の代表者の平均年齢は69.3歳。もちろん70歳を超えても現役で診療を続ける歯科医師も多いと思うが、思考実験にお付き合いいただきたい。
概況の70歳未満の歯科医師数は2022年8万9,086人、2032年(10年後)6万5,520人、2042年(20年後)4万3,122人。
新規参入としては歯科医師国家試験合格者を加える。2025年(第118回)の合格率は70.3%(全体)と12年ぶりに7割を超えたのが明るいニュースとして報じられた。過去11年間の合格者数は1,969~2,136人で平均2,041人。約2,000人とすると10年で2万人、20年で4万人が加わるとする。すると70歳未満の歯科医師数は2022年8万9,086人、2032年(10年後)8万5,520人、2042年(20年後)8万3,122人と、冒頭で述べた減少傾向が続いていくことになる。減少率は10年で4%、20年で6.7%。
日本の総人口は2004年をピークに減少し続けており、2100年には明治時代後半の水準の4,771万人(中位推計)になるといわれている。この変化は、千年単位でみても類を見ない極めて急激な減少。2022年は1億2,494万7,000人(実績)であるのに対して、2032年1億1,603万2,000人(厚労省将来推計人口(2002年推計))、2040年1億1,284万人(厚労省将来推計人口(2023年推計))。減少率は10年で7.1%。18年で9.7%になる。歯科医師数は2042年であるが、人口は2040年を準用させていただく。人口10万対70歳未満歯科医師数は2022年71.3人、2032年73.7人、2042年73.7人と極端な変化がないことがわかる。少なくとも1980年代の実績に戻ることはなさそうである。
これからの20年、歯科医師の減少は続いていくが、それを上回る人口減少により人口10万人に対する歯科医師数は70歳以上を加えても約80人前後で安定していくと推測する。もちろん歯科医師を希望する若者や、歯科大学が減ったり、歯科医師の働くフィールドが広がれば相対的に不足していくだろう。