論壇

「保険料を減らし、給付も減らす」は国民の声ではない

久喜市 青木 博美
 貧困化がすすみ、特に若い世代での生活が苦しくなってきているといわれている。現役世代の社会保障、社会保険料の負担が大きいとして負担軽減の施策が検討されている。負担軽減の引き換えに給付の削減が検討されている。高齢者の自己負担割合を見直し、所得のある高齢者の医療。介護サービス利用時の自己負担割合の引き上げ、介護保険については利用者負担割合の「2割負担対象者」の年収基準を現在の280万円から230万円に引き下げる案などがある。
 さらに高額療養費制度の見直し(70歳以上医療費負担増で調整)、後発医薬品の活用推進(原則として後発医薬品の使用を促す)、一部薬品の保険外し(オンライン診療、服薬指導の推進)、入院患者の食費引き上げなどもある。
 一方、医療機関の経営は、物価高騰、人件費の増加などにより難しくなっている。調査により差はあるものの一般病院の6割~7割が経営赤字の状況である「四病院団体協議会の調査」(2024~2025年度、63.6%)、「日本医師会調査」(2024年度、69.5%)。
 また、介護保険事業者も経営難である。倒産件数は増加傾向で、今期は過去最高と報道されている。特に小規模事業者の経営は厳しさを増している。
 高齢者、認知症高齢者の増加でニーズは増大していく。制度はあるが給付は受けられないという状況になっていく危険がある。医療、介護の制度を維持していくためには診療・介護報酬アップが必要である。
 政治は、まず負担を減らす。これは若年、壮年層の声に沿うものである。負担を減らせば財源が少なくなるので給付を減らす。この方向で動いているように見える。
 これは本当に国民の声なのか。二木立氏(日本福祉大学名誉教授)が日本医事新報(No.5302,2025.12.6)に国民の意識調査の検討を行っており、参考になるので紹介する。
 負担感は重い。社会保険料の負担感は20~60代の正規雇用の会社員、公務員の80%が負担が重いと感じている(住友生命「スミセイ『わが家の台所事情アンケート』」)。また、6つの調査(内閣府調査、厚労省調査、健保連調査、三菱総合研究所調査、長寿社会開発センター調査、日本医療政策機構調査)を比較検討しており、給付も負担も減らすは約1~2割。負担増容認は約4~6割。給付の拡充を支持して、そのための負担増を容認する人は1~2割だ。現役、若年で負担減とする声が多いわけではない。
 負担は重く感じるが給付水準を下げてでも負担を減らすべきとまでは思っていない。しかし給付を拡大して、そのために負担増を容認とも思っていない。現状維持とする声が多いようである。現状維持バイアスであろうか。
 現在の動きをみると、まず負担を減らし給付水準を下げる。その後、やはり制度を維持するために負担増が必要となり、負担はもとに戻り給付水準は下がったままとなりそうな気がする。もっと何か良い方策はないのだろうか。
 国民が求めているのは安心して生活できる社会である。国民のセーフティネットが弱体化してしまってはいけない。

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