論壇

オール埼玉総行動へのお誘い

三郷市 土田 昌巳
 「立憲主義を取り戻す!戦争させない!9条こわすな!6・7オール埼玉総行動」が6月7日、さいたま市浦和区の北浦和公園で行われ、県内外から約4800人(主催者発表)が集まった。共産、社民などの各党関係者が出席。日本共産党の塩川鉄也衆院議員は「今こそ憲法を真ん中にすえた市民と野党の共闘を」と発言。社民党のラサール石井幹事長と新社会党県本部の村田文一委員長も、改憲反対の意見を表明した。
 ゲストスピーチを行った元文部科学事務次官の前川喜平氏は「憲法では国民は個人として尊重されるべきだとある。人間を守り、幸せに暮らせるために国家があるはず」と呼びかけた。集会のあと、参加者らはプラカードを揚げて「戦争させない!」「9条こわすな!」などと訴えながら浦和駅西口まで約2.2㎞をパレードした。
 当日は小雨交じりの曇り空。近年の酷暑を思い浮かべると過ごしやすい気候であったため、浦和駅までのパレードも苦にはならなかった。集会の後にパレードというと5月1日に世界各地で行われる労働者の祭典・メーデーを思い浮かべる。日本では現在、立憲民主党や国民民主党を主に支持する日本労働組合総連合会(連合)と日本共産党との関係が深い全国労働組合総連合(全労連)や旧社会党系(社民党や新社会党など)の流れを汲む全国労働組合連絡協議会(全労協)による分裂開催だ。連合は参加のし易さからGW前半の4月にメーデーを行うようになったが、全労連・全労協は5月1日にこだわる。
 戦後の日本の労働運動は、主に総評(左派・社会党支持)や同盟(右派・民社党支持、労使協調)といった複数の組織に分かれて主導権を争っていた。1989年、これらを一つにまとめて大きな力を作ろうという動きが起こり、現在の連合を結成。しかし、この大統合の際に連合の労使協調路線への反発があり、「これまでの対決姿勢を捨てて国や会社に歩み寄るような再編(右翼再編)にはついていけない」と考えた勢力が別の組織を作った。共産党系の組合などが中心となり全労連を、旧総評左派などの組合が全労協を結成。この組織改編の際、メーデーの運営方針(満場一致から多数決制への変更など)を巡っても激しい対立が起こり、それぞれが独自のメーデーをバラバラに開催する分裂開催が定着した。
 フランスの思想家、レイモン・アロンは「右派は共通の敵(左派)がいなくても利害で結びつくが、左派は共通の敵(右派)がいないと、身内同士の正しさの争いで自滅する」といった趣旨の言葉を残している。右派の本質が「今ある伝統、体制、秩序を守る」という現実的なものであるのに対し、左派の本質は「社会の不条理を正し、理想の未来を作る」というもの。右派は階層意識や先輩・後輩、リーダーへの服従といった縦社会の論理が働きやすい傾向があり、多少の不満があっても「トップが決めたことだから」と組織がまとまりやすい。左派は平等や民主的な議論を重んじ、対等に発言権を持つべきだと考えるため、徹底的に議論を戦わせる。しかし、全員が納得するまで話し合おうとする結果、意見がまとまらなくなり、「それなら自分たちだけで正しいと思うグループを作る」と分派を作りやすい。左派が団結できないのは正義感の強さゆえ。信じる正義や理想に対して、妥協せず真面目すぎるからと言える。
 オール埼玉総行動は2014年7月の集団的自衛権の行使容認に関する閣議決定などをきっかけに、埼玉県内の労働組合や市民団体が集まって実行委員会を組織したのが始まり。前出の通り、労働・政治運動は支持政党の違いによって組織が分かれがちだが、この集会はそれらの枠組みを超えて「安保関連法の廃止・集団的自衛権の行使容認の閣議決定に反対」という点において幅広い勢力が大同団結している。日本のリベラル・左派系の運動において、労働組合や政党の「大人の事情」を乗り越え、地方レベルでこれだけ大規模かつ継続的に共同歩調を合わせられている事例は全国的にも珍しく、埼玉方式などと呼ばれて注目されている。
 来年も6月に予定されているオール埼玉。会員の皆さんにもこの雰囲気をぜひとも味わってほしい。

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