埼玉県議会
保険証廃止の延期を求める請願 “またも”不採択

埼玉保険医新聞 24年4月5日号より(一部修正)
 埼玉県議会は3月27日の定例会において、協会が提出した請願「国民皆保険制度を堅持し、地域医療に混乱を来さないように、健康保険証の廃止期日の延期を求める意見書を国に提出すること」を不採択としたことが、県議会議長から協会宛に通知された。

 定例会に先立って3月6日、請願審議の付託を受けた福祉保健医療委員会では、請願を提出した民主フォーラム会派の小川寿士議員、無所属県民会議会派の八子朋弘議員、共産党会派の城下のり子議員の3議員が請願に賛成した。しかし自民(8人)、公明(1人)の会派は反対した。
 福祉保健医療委員会は賛成少数のため請願を不採択とする報告を県議会に報告し、二十七日の定例会は委員会報告を追認した。
 請願を不採択とした理由は下表のとおり。県議会は混乱を最小限に抑える措置が必要としながら、①廃止後に経過措置が一年あること、②資格確認書が自動で交付されることを理由に、十二月の保険証廃止に賛意を示した。①②の措置がされても医療現場における混乱は必至である。県議会の判断と結果は大変残念である。協会では、引き続き議会、議員に訴え続けていく予定である。

 協会は23年9月県議会でも同様の請願を提出していたが不採択とされていた。
 

12月の健康保険証廃止の延期を国に要請する意見書の提出を求める請願を埼玉県議会に提出しました

 24年2月20日に埼玉県議会に提出した請願は以下です。民主フォーラム会派より議会に提出いただきました。3月6日の福祉保健医療委員会を経て3月27日の本会議にて不採択となりました。

1 件  名
 「国民皆保険制度を堅持し、地域医療に混乱を来さないように、健康保険証の廃止期日の延期を求める意見書を国に提出すること」に関する請願

2 請願の趣旨
(1)現行の健康保険証を廃止し、マイナンバーカードへの一体化(マイナ保険証化)をすすめる法律が昨年6月2日に成立し、今年12月に健康保険証が廃止されます。
(2)しかしながら、マイナ保険証とそのシステムをめぐるトラブルは多発し続けており、保険証を廃止できる環境下にはありません。国民皆保険を堅持し、地域医療に混乱を来さないように、健康保険証の廃止期日を延期する意見書を地方自治法第99条の規定により埼玉県から国に対して提出してください。

3 理  由
 2024年秋に現行の健康保険証を廃止し、マイナンバーカードへの一体化(マイナ保険証化)をすすめる法律が昨年6月2日に成立、今年12月に保険証廃止が決まっています。
 しかしながら、埼玉県保険医協会の会員調査では、マイナ保険証を利用することによるトラブルを経験している開業医は多く、直近調査(2023年12月4日~14日実施)では、政府が「総点検」で一定の収束の方向性を示していた昨年10月以降に限定しても58%の開業医がトラブルを経験しています。保険証の紐づけ誤りで患者情報が異なっていたり、名前が表記されなかったり、資格が無効であったり、負担割合に齟齬があったり、様々です。
 また、8月の調査(2023年8月1日~31日実施)ではマイナ保険証を利用することにより受付の実務が「増えた」としたのが92%で、その理由は患者への説明やカードリーダー機器の操作の補助の他、取り込んだデジタルデータを現在の保険証や既存のレセプトや電子カルテとの照合作業など資格確認作業などです。高齢者の負担割合の相違も14%で見られており、医療機関の所在地は県内35自治体にまたがります。
 資格確認がマイナ保険証のみではできない例は相当数報告されているため、健康保険証の廃止について「賛成」したのはわずか3%で、「保険証は残すべき」が89%、「廃止は延期すべき」が8%で、合わせて97%が保険証の廃止を望んでいないことが示されています。
 昨年5月の会員調査では、「保険証を存続すべき」としたのは85%でした。1年前の2022年8月~9月実施調査時は「保険証廃止に反対」は医師54%、歯科医師66%でした。マイナ保険証による受付の経験が増えるほど、健康保険証の存続を求める声が着実に増えています。
 厚労省の発表によればシステムが本格稼働した昨年の4月度のマイナ保険証の利用率は6.3%でしたが、12月度は4.29%です。紙の保険証しか扱わない医療機関の受診数を母数に含めれば、利用率は2.95%とも算出されています。患者のマイナ保険証に対する信頼は高まらずむしろ下がり続けています。また、国家公務員の利用率も平均4.36%で国民の利用率と相違なく極めて低い状況です。また医療機関における利用率もマイナ保険証に関する診療報酬上の加算点数を利用している医療機関に限ってみても医療情報の利用率は3割を切っており芳しくありません。現在の客観的な評価が様々示されています。そしてシステムそのものは完成しておらず、いまだマイナ保険証に対応していない保険証が存在し、公費負担医療制度や生活保護などについても今後次々と導入計画はあるものの完成目途は示されていない状況にあります。
 新しい技術の導入時期にあっては様々なトラブルやエラーが生じることはやむを得ず、それらに上手に対応して良きシステムに発展させていくことが必要です。そのためにも既存の安定的に運営されているシステムをしっかりと利活用をしながら、新たな技術に生かしていくことこそが、将来に向けて技術を発展させていく方途です。
 政府は従来保険証が国民ひとりひとりに届けられていた方式を廃止し、新たに国民側の申請手続によってマイナ保険証や資格確認書の発行を求める方法は「無保険状態」が生じるため、マイナ保険証を持たない国民全員に「当面は」「資格確認書」を発行し、マイナ保険証を持つ国民全員には「資格情報のお知らせ」を発行することにしています。これは、現時点でマイナ保険証だけでは資格確認のためのアクセスが保障されないことによります。
 いずれの券面とも現在の健康保険証と表記内容は同様であり、わざわざ異なる券や証書を発行することに合理性はみえません。そして、これらを発行する保険者にとっては、今年の12月までに発行体制を整えることが困難になっています。現行の保険証が存続すれば、国民や患者や医療機関にもわかりやすく、保険者にも新たな人手や予算も必要となりません。
 国民皆保険制度は日本が世界に誇れる制度であり、多くの職層の先人達の努力により60年以上守られ続けてきました。健康保険証により安心して医療機関を受診できる制度は我が国が世界に誇るべきものです。
 健康保険証が全ての国民に届けられている現在の制度と同等にマイナ保険証システムの運営が安定するまでは、少なくとも現在の健康保険証の廃止期日を延期させて、国民皆保険制度が堅持されることを強く求めるものです。
 

1  国民皆保険制度を堅持し、地域医療に混乱を来さないように、健康保険証の廃止期日の延期を求めます

 以上、地方自治法第99条の規定により国に意見書を提出してください。
 
 

保険証廃止で新たに拡がる混乱 8種類もの資格確認ツール
マイナ保険証を持たなくとも慌てずに

埼玉保険医新聞 2024年3月5日号 一部改変
 政府が発表している保険証廃止に伴う、証書類をまとめたものがこの表です。
 保険証廃止後にも最長一年間の経過措置を認めているものの、例えば今年の8月に発行され期限が一年間の国保の場合は来年7月末で経過措置は終了する。
 マイナ保険証を持っていない者には、代わって「資格確認書」が交付されます。これは保険証と同じ証書で自動的に一度は届けられます。現在、マイナ保険証を持っていなくても慌てる必要はありません。
 ただし二回目以降の交付は本則では自ら毎年更新申請が必要とされています。今後の世論の趨勢によってきます。
◆マイナ保険証解除手続
 最も混乱が心配されるのは、既にマイナ保険証を持っている場合に、保険証が経過措置を超えて無効になった場合です。マイナ保険証を持つ者はマイナ保険証でしか受診できなくなります。
 マイナ保険証の手続時にはこうした説明が政府からされていなかったため、マイナ保険証の使用を希望していない患者には混乱が拡がる可能性が大きいといえます。このようなニーズへの対応として、今年10月からマイナ保険証の「解除」受付が始まります。解除をしても既に取得したマイナポイントの返還は求められません。

◆保険証廃止で新たな確認ツールが8種にも
 マイナ保険証を利用するとエラーが生ずるために、政府は保険証に代わる新たなアナログツールを次々と発表しています。「資格情報のお知らせ」はスマホ版も発行されることになりました。保険証の廃止後、最大7・8種もの資格確認方法が混在することとなります。
 医療機関の受付窓口では今以上の混乱と実務上の負担増となることは確実です。
 健康保険証を廃止することなく、存続させれば、こうした面倒はなくなります。保険証を存続させていくことが何より求められています。
 

「保険証を残そう! 保険証が廃止されたら‥
 資格確認書?マイナ保険証?」チラシの紹介について

2024年3月21日
◇ 3月23日(土)の埼玉県内の朝刊(読売、朝日、毎日)各紙に、以下のような保険証が廃止された後にどうなるか? フローチャートを掲載した署名用紙つきのチラシを折り込み配布しております。今年12月に保険証が廃止されてしまうと、患者さんや国民の皆さんの保険証がどのように切り替わっていくのか、現段階では個別の説明などはされてきていません。
 保険証廃止後も1年ほどの経過措置があり、廃止後には「資格確認書」が全員に送付される、などの説明を政府はしておりますが不正確です。特にマイナ保険証を保有されている方には「資格確認書」は届きません。保険証が廃止された後には、医療機関にはマイナ保険証でしか受診できなくなることは、保有者のほとんどの方に知らされていません。
 わかりづらく、ご不安な方も多数になると思われますが、現行の保険証を残してマイナ保険証を使いたい方が使えるような併用制にすれば、保険証の切り替えに伴う面倒は一層されることをお伝えしています。各紙を講読されている皆様におかれましては是非ご高覧ください。
 チラシは以下でもご覧いただけます。

◆ 新マイナンバー法が国会に提出

 マイナ保険証を来夏よりスマホに搭載、マイナカードのデザイン変更も再来年に
 保険証を残そう署名にご協力ください

 政府は3月5日、マイナ保険証をスマートフォンに搭載する法案などを国会に提出しました。今後、衆議院と参議院で審議や採決がされていく見込みです。
 現行のマイナ保険証健康保険証を廃止してマイナンバーカードに一体化する法案を閣議決定しました。現在開会中の国会に法案が提出される見込みです。

 現在のマイナ保険証も人気が低迷中で利用率が伸び悩んでいます。利便性が感じられず使用しても不具合が生じるケースもあることなどによりリピーターが増えていません。このような状況にありながら、現行保険証を廃止することに加え、来夏よりマイナ保険証をスマホに搭載する、新たな仕様を追試することは、トラブルや混乱をさらに増加されていく可能性の高いものです。現行のマイナ保険証も実証実験(パイロットテスト)をすることなく、いきなり全国民にマイナ保険証システムの利用を呼びかけて、混乱が全国各地に生じたことが、何も教訓にされていません。実証実験もなしに導入することは多くの問題が生じます。
 健康保険証は国民の財産であり、国民皆保険制度を根幹といえます。マイナカードの普及策のために国民皆保険制度を毀損させるようなことがあってはなりません。
 私ども埼玉県保険医協会では、保険証を残することを求めて国会に請願をしてきています。
 24年の通常国会の中で、埼玉県から選出されている国会議員のうちご賛同いただけている議員は10人です。保険医協会では自民党、公明党の議員の皆様方にも保険証を残すことにご賛同をいただけるよう、引き続き要望を重ねております。
 国民の皆様方には何卒ご協力を賜りますようよろしくお願い申し上げます。


以下にご送付ください。
〒330-0074 さいたま市浦和区北浦和4-2-2-5F
埼玉県保険医協会 署名担当

■「現行の健康保険証を残してください」請願署名 PDF
 

マイナ保険証利用率 国家公務員も低迷 4.36%(厚労省発表)
マイナ保険証の客観評価

2024年2月6日
 厚労省は国家公務員のマイナ保険証利用率を発表した。国民の利用率低迷が続いており、デジタル大臣や厚労省から、「強要」と「金銭インセンティブ」による利用率向上策が次々と示されているところだが、国家公務員の平均のマイナ保険証利用率、マイナ保険証の登録率とも国民全体の数値と相違がないことが判明した。
〈 利 用 率 〉
平 均   4.36%
総務省   6.26%
内閣府   5.12%
厚生労働省 4.88%
と、低率となっている。厚労省の霞ヶ関本省は8.39%と表の中では最も高いが、それでも10%に満たない。
マイナ保険証の登録率(マイナ保険証化)も、国民平均が57%(11月度)であったのと比較しても高い数値ではないことも示された。
●表 マイナ保険証の利用状況(国共済組合の利用状況)(厚労省)
  下段赤文字キャプション:埼玉県保険医協会

◆マイナ保険証の客観評価

 今後、政府が国家公務員に対して、マイナ保険証利用やマイナ保険証登録を一層と強要していくことが見込まれる。しかし、今回発表された数値は、政府や河野デジタル大臣らが説明してきている「マイナ保険証の利便性」が、推進する立場の国家公務員にも実感されていないことが示されたものといえる。

 マイナ保険証の利用に伴う受付での毎回の煩雑さは外来受診時の多くの患者が実感しているものだ。医療機関においても利用方法の説明が求められる一方で、かかる実務は「却って増えた」とするとこが多い。目玉である医療情報の閲覧も利用価値を認める医療機関は少数で低迷したままだ。

◆若年層ほど低い利用率

「マイナ保険証の利用率が低いのは、高齢者の利用率が高まらないためだ」
と考えられがちであったが、事実ではなかった。
表上段の折れ線グラフは、5歳刻みでみたマイナ保険証の利用率である。
最も利用率が高いのは「65歳~69歳」、次が「60歳~64歳」、「55歳~59歳」と年齢群の低下に伴い利用率も低下していく。20歳代、30才代の方が断然低い。
●表 マイナ保険証の利用状況・マイナ保険証利用率年代別 (厚労省)
 こうした客観的データがあったにもかかわらず、昨年末に、河野デジタル大臣は「マイナ保険証は一部の例外を除いて全ての医療機関と薬局でカードリーダーを設置し、マイナ保険証を受け付けることが義務化されている。利用できなかった場合には、マイナンバー総合フリーダイヤルにご連絡をいただきたい」として、国民に通報することを呼びかけるなど。厚生労働省に情報提供し、事実関係を確認することになる」と述べた。
 利用率が高まらないのは医療機関からの呼びかけの問題ではなく、利便性が伴っていないためだ。
 また、マイナ保険証にトラブルが多い現状では、医療機関が紙の保険証を確認することは受付を円滑に行ううえで当然のことといえる。このような「通報」を呼びかけることは、医療現場に混乱をもたらしかねないものだ。

12月度のマイナ保険証利用率は4.29%
8カ月連続低下

 1月には、前月、12月のマイナ保険証利用数が発表されているが、利用率はさらに低下している。

●グラフ マイナ保険証の利用率
 図:埼玉県保険医協会作成
 

7カ月連続低下 マイナ保険証の利用率 4.33%
利用数も4月以降最低を記録
紙の保険証のみしか利用できない医療機関を含む利用率なんと2.95%

2023年12月27日
●グラフ:マイナ保険証の利用率
 マイナ保険証の利用率が4月以降は毎月下降をたどってきている。本日、厚労省は11月度の資格確認システムの運用施設における、保険証の利用数、マイナ保険証の利用数などを発表した。協会でマイナ保険証の利用率を算出すると「4.33%」となった。
 利用率の低下は7カ月連続を更新し最低を記録、実際の利用数も4月以降では最低数を記録した。

◆紙の保険証のみしか利用できない医療機関を含む利用率なんと2.95%

 これまで発表されてきている利用率は、オンライン資格確認システムのカードリーダーを設置している医療機関において、受付で「マイナ保険証」が利用された場合の率が発表されてきた。
 本日、厚労省は初めて、紙の保険証受診であってオンライン資格確認を利用しない場合も含めた資格確認件数も発表した。この発表により外来の保険診療全体の受付数を母数として、マイナ保険証の利用率を参集することができるが、なんと2.95%という利用率になった。これが、国民の受診時にマイナ保険証を利用している率の実態である。

◆空転した「1度は利用してキャンペーン」
 次は大臣が通報の呼びかけに

 政府は、利用率と利用数の低迷状況を受け、10月以降、医師会、歯科医師会、などの3師会や健保連などと、「マイナ保険証、1度使ってみませんかキャンペーン」を開始し、院内掲示用のポスターなども作成・配布を実施していた。マイナ保険証には利用時にトラブルが生じる現状では、ポスターを掲示する医療機関はほとんどなく、キャンペーンは事実上の空転状態であった。

 政府は、利用率の引き上げ対策として、来年以降には、利用率の引き上げ率によって医療機関に支援金を支給する施策を発表したが、金銭インセンティブを提示する方式では、利用率の向上はみられないだろう。医療機関に対しても、患者に対しても、全く愚弄しているものだ。
 河野デジタル大臣は、12月22日に「マイナ保険証は一部の例外を除いてすべての医療機関と薬局で受け付けることが義務化されている。利用できなかった場合には、マイナンバー総合フリーダイヤルにご連絡をいただきたい。厚労省に情報提供し、厚労省が医療機関に事情を確認することになる」として、通報することを国民に呼びかけたとのことであるが、利用率の低迷は医療機関側の使用拒否ではなく、システムが安定的にサービス提供をしていないことに原因があることに他ならない。

◆「保険証の存続」を早期に発表を

 このような状況で12月2日に保険証を廃止すると政府は発表しているが、マイナ保険証は国民に全く支持されていない。マイナ保険証を国民皆保険制度の主軸にすることは諦め、早急に保険証の存続を打ち出すことが求められている。
 保険証を廃止したあとに「資格確認書」や「資格情報のお知らせ」という代替証書の発行のために、多額の補正予算が計画されているが、保険証を存続させれば不要な予算執行である。
 予算の適正執行の観点からも、政府の強硬姿勢は改めることが求められている。
 
【2023年12月22日発表】 

10月以降のマイナ保険証・オンライン資格確認に関するトラブル会員アンケート報告

埼玉県保険医協会
【 アンケート実施の背景 】
 2023年6月にいわゆる「保険証廃止法」が成立をした後にも、新たな問題が次々と浮上したために、8月に首相が会見で廃止の時期を改めて判断すると述べるとともに、政府として「最終とりまとめ」を発表し、法の趣旨を大きく修正緩和するとした。「資格確認書」の発行要件、「資格情報のお知らせ」の新設にみられるとおり、マイナ保険証のみでは、国民皆保険制度の運用は困難であり、資格確認ができる書証の必要性が示された格好である。マイナ保険証の利用率も医療機関における医療情報の利用も低く、システムの信頼は低迷中である。
 マイナ保険証のカードリーダーの設置は、今年4月より義務化とされているものの、政府の準備不足などのため、多くの医療機関に対して「9月末までには設置を」とする経過措置が認められていた(尚も様々な経過措置は継続中)。本会では今年の5月、8月にもマイナ保険証システムに関する会員アンケートを実施しているが、10月以降の状況について、改めて会員調査を行うこととしたもの。

【 本アンケートについて】
 本アンケートは12月4日~14日に実施し、開業医会員を対象に利用状況、エラーやトラブル経験、来秋から健康保険証を廃止することなどを設問として集約した。
 回答した開業医で10月1日以降に「トラブルがあった」としたのは58%と依然として半数以上が経験している。5月時の「72%」よりも減少しているとはいえ、マイナ保険証を患者が利用しないためにトラブルがないとする回答も見られる。
 保険証が廃止された場合の受付業務についての予想では「受付業務に忙殺される」とする回答が60%と最も多く、「診察の待ち時間が長くなる」「スタッフを増やさざるを得ない」と続いた。「一定落ち着いている」とする回答10%である。利用状況の低迷にある現在でも受付の手が取られるなど、システム利用に伴う実害は今も進展中である。1年後には収束しているとみている回答者はほとんどいない。
 保険証の廃止に換えて様々な書証・ツールが政府から発表されているが、廃止後は、資格確認の書証・ツールは6~7種類も増える見込みであり、この点だけでみても受付の混乱が予見されている。
 2024年秋の保険証廃止について、「賛成」するのは3%にとどまり、「賛成だが延期すべき」8%、「保険証は残すべき」89%と、二つを合わせると97%にも上った。来年秋に健康保険証の廃止については、医療現場では賛同は得られておらず、また、「不安の払拭」には至っていないことが示されている。
 保険証廃止を求める声は、国民からも高まっていない。政府には保険証の存続を求めたい。

 同時期に全国の保険医協会が本調査を実施しており、全国保険医団体連合会が来年回答集計を発表予定である。
 詳細は下記のPDFをご覧ください。
◆ 10月以降のマイナ保険証・オンライン資格確認に関するトラブル会員アンケート報告 PDF
 

岸田首相・河野デジタル大臣 来秋の保険証廃止を発表
不安に応えず、払拭の確認もせず

埼玉保険医新聞 2024年1月5日号
 12月12日、政府のマイナンバー情報総点検本部が開催され、岸田首相は「法令に基づき、予定どおり、現行の健康保険証の発行を来年秋に終了し」「マイナ保険証を基本とする仕組みに移行する」と宣言しました。
 同日の会見で、河野デジタル大臣は、保険証廃止の前提であった「国民の不安払拭」を判断した材料を示しませんでした。記者から「マイナ保険証一本化、保険証廃止の前提条件は、国民の不安が払拭されることと岸田総理が発言していた」「国民の不安が払拭された根拠はあるのか。何らかの世論調査をしたか」「例えば、全国保険医団体連合会と意見交換して納得してもらったか」と判断根拠が問われたことに対して、「不安を払拭するための措置を取る」として廃止することを表明しました。
 また、「イデオロギー的に反対される方はいつまでたっても不安だとおっしゃる」として、患者や医療担当者からあがっている、医療現場で生じている困難事例を訴える声を「イデオロギー」とすり替えながら保険証廃止を強行する姿勢を示しました。

◆山崎理事長が抗議談話を発表
 12月14日、山崎理事長は抗議談話を発表。政府や与党の人事交代が相次ぎ政権そのものの信頼が低下している中で、国民皆保険制度を支える保険証の廃止を発表した理由や国民の不安を払拭した判断理由を示さない姿勢を批判しました。河野大臣の不見識さに抗議と発言の撤回を求めました。
 
【理事長抗議声明】総点検本部の来秋保険証廃止方針発表を受けて

健康保険証は必要です
妄想的な政府決定は見直し、保険証は存続を

2023年12月14日 埼玉県保険医協会 理事長 山崎利彦
◆ 改善策に着手せず - アナログ作業を温存、個人情報を当事者に判断させず
12月12日、政府のマイナンバー情報総点検本部が開催されるとともに、岸田総理は「法令に基づき、予定どおり、現行の健康保険証の発行を来年秋に終了し」「マイナ保険証を基本とする仕組みに移行する」と宣言しました。しかし、自ら「総点検」を行うとしていた結果を国会期日が無くなった段階で発表し、国民や医療機関に対する説明の機会を欠く姿勢は不誠実と言わざるを得ません。政権の官房長官や閣僚の交代、与党自民党の党幹部の辞任交代などが次々と発表されるという異常な状況の中で、国民皆保険制度を支える健康保険証を廃止するという重大な決定をしたことの説明もなされていません。
総点検本部の発表をみても「国民の不安を払拭した」とする根拠や判断した材料は全く見いだせません。しかも内容は、政府が限定した調査の範囲内における事例報告にすぎず、一部は推計値をも含んだもので「総点検」でも無ければ、その「最終の報告」でもありません。そして、報告の最大の特徴は「点検結果の再発防止」として、作業ガイドライン策定、マイナンバー記載の求め等、アナログ的な対処策が並んでいることです。これは、担当機関・担当者によるアナログ作業をそのまま温存するもので、紐づけ誤りを発生させるシステムそのものには見直し着手がされていないことを表しています。これからも一定割合で、紐づけミスが発生し続けることを前提としています。
また、保険証廃止やオンライン資格確認システムが医療DXの基盤となることを強調していますが、個人の医療情報が1人1人の当事者の希望で、取り扱いを選択できないという問題も温存されたままとなっています。「不安の払拭」ためには、保険証廃止も医療DXも担当大臣や政府の一部の思惑を最優先させている現状を直ちに軌道修正し、患者や医療担当者の利便性向上を目的に推進することが必要です。


◆ 8月に廃止法は形骸化。システムも信頼低下、医療機関の確認作業は大きな負担に
総理が8月に総点検の実施とともに、「保険証廃止は国民の不安払拭が前提」と表明した直後、政府は「最終とりまとめ」を発表し、6月に成立したばかりの保険証を廃止することなどの法律の内容を大きく修正しました。保険証の廃止に換えて「資格確認書」は当面の間は申請をしなくとも一律に交付することや、「資格情報のお知らせ」を発行することを発表するとともに、暗証番号を不要とするマイナ保険証の交付などを正式に認めました。
この時点で「マイナ保険証」では、保険診療時の資格確認ツールに適用するには困難であると判断し、法規定に関わらず大きな緩和修正策を採用していたものです。立法の前提条件や成立後の見通しは大きく変更していました。
しかしそのために、保険証の廃止に換えて新たに創設される証書ツールは6種にも7種にも数えられることにもなりました。医療機関の窓口における資格確認の作業は大きな負担が強いられるとともに、混乱はさらに拡大することが見込まれます。今年10月に実施した本会会員調査でも、依然としてマイナ保険証の利用に伴うシステムエラーやトラブルを経験する医療機関が存在し、9割を超える医療機関が来秋以降も保険証存続が必要と回答しています。国民患者のマイナ保険証に対する不信感は強く、利用率は低迷を続けています。


◆ 不見識な河野デジタル大臣  総理の任命責任も問われる
このような状況にありながらも河野デジタル大臣は、来秋の保険証廃止という会見の中で、記者から国民の不安払拭を判断した根拠を質されても示すことがなく、さらに「イデオロギー的に反対される方はいつまでたっても不安だ、不安だとおっしゃるでしょうから、それでは物事が進みません」「きちんとした措置を取ったということで進めます」と説明するなど不誠実極まりない回答をしています。
そもそも成立したばかりの法を見直さざるをえず、また稼動中のシステムにおいて「総点検」をせざるを得なくなる事態は異常なことです。立法提案や見切り発車にてシステム稼動を判断してきた大臣の責任は厳しく問われてしかるべきものです。
医療現場の意向を踏まえた医療DXを推進するためには担当大臣は妄想的ではなく論理的な判断をできる人物が求められます。河野デジタル大臣はその任を果たせず、不誠実な言質を重ねる態度を放任している現状は任命している総理の責任も問われるものです。
政府、国会には、今一度、冷静に現状を鑑みたうえで判断することと、国民皆保険に不可欠な現在の健康保険証存続のために法令の修正を求めるものです。また、デジタル大臣には現場実態に基づき不安や困難さを訴える医療担当者や患者国民の声を「イデオロギー」として一掃する発言の撤回を求めるものです。
以上
◆【理事長抗議声明】総点検本部の来秋保険証廃止方針発表を受けて PDF
 

健康保険証の存続を求める署名にご協力ください

2023年11月2日
 6月に国会で成立した保険証廃止法ですが、その後も、マイナ保険証を利用したことによって様々なトラブルが生じています。8月に政府は、保険証を廃止する法律の内容は維持しながらも、部分的な緩和・修正策を発表するまでになっています。

 マイナンバーカードを利用したい患者さんは利用いただくにしても、現行の保険証をわざわざ廃止する必要はありません。多くのトラブルは保険証を存続させれば解決されていきます。

 健康保険証は国民の財産であり、国民皆保険制度を根幹といえます。
 私ども埼玉県保険医協会では、3月~6月までの期間で保険証の存続を求めて国会に請願していく取り組みを行ないましたが、この秋も新たな請願項目にて署名活動に取り組んでいます。
 春にご協力をいただきました方も含めまして、何卒ご協力を賜りますようよろしくお願い申し上げます。
以下にご送付ください。
〒330-0074 さいたま市浦和区北浦和4-2-2-5F
埼玉県保険医協会 署名担当
 
前回の集会の様子もYouTubeでご覧いただけます

11月9日「健康保険証を残そう!」私たちの声を聞いて国会内集会はこちら
https://hodanren.doc-net.or.jp/info/information/2023-10-31/
 

廃止法成立後も政府は方針を大きく軌道修正

 政府のマイナンバーカードと健康保険証の一体化に関する検討会が八月に発表した「最終とりまとめ」の中で新たな事項が示されている。①保険証廃止法を大幅に修正し、マイナ保険証を保有する者全員に「資格情報のお知らせ」を交付のうえ、医療機関を受診する際には、マイナ保険証と双方を携行するよう求めている。②また、マイナ保険証を持たない者には当面の間は、保険者が自動的に「資格確認書」を発行することも明示している(図を参照)。
 マイナ保険証のみならず予備的ツールを補完することは、国民皆保険制度を国が責任をもって運営していく限りは必要なことである。
 政府の最終とりまとめが、マイナ保険証のみでは、オンライン資格確認システムは運用が困難であることを認めていることから、声明では国会においても、来年秋からの保険証廃止を見合わせるよう、早急に審議のうえ保険証の存続を求めた(理事会声明の全文は協会ホームページに掲載)。たない者には当面の間は、保険者が自動的に「資格確認書」を発行することも明示している(左図を参照)
 
マイナ保険証の利用率は9月も低下 カードリーダー設置の義務化後5ヶ月連続
●グラフ:運用開始施設におけるマイナ保険証の利用数と利用率
 マイナ保険証の利用率が四月以降は毎月下降をたどっている。
 9月の厚労省発表では、前月8月度の実績は平均4・67%と発表された。
 これに対し「国民の皆様が、医療現場でマイナ保険証を一度、実際に使っていただけるよう、様々な取組を積極的に進めてまいりたい」と武見大臣は述べている。

利用率のトップは医師国保と歯科医師国保

 9月29日の社会保障審議会医療保険部会の中で発表された8月度の各保険者ごとの利用率が衝撃的だ。後期高齢者は平均を大きく下回る2.89%、公務員の共済組合でも4・54%である。
 またマイナ保険証を推奨するべき職層の厚労省や支払基金の職員やIT企業、ヘルスケア企業らでもマイナ保険証の利用率は11%?13%である。利用率の高い職層は驚くことに医師国保と歯科医師国保となっていることが判明した。

●図 マイナ保険証の利用状況
 この状況を受けて、厚労省と日本医師会、日本歯科医師会などは、マイナ保険証を「一度使ってみませんか」キャンペーンを10月5日に検討。10月下旬には「一度使ってみませんか」とする院内掲示物のデザインなどが本当に発表されている。
 会員からは「トラブルが続き、受付でスタッフの手間が取られるマイナ保険証は医療現場では利用を避けたい。医療団体がこのような掲示物を紹介するとは残念」との意見も寄せられた。

 協会では従前より「保険証を持参ください」と記した院内掲示物を会員に無料で提供してきている。引き続き活用をされたい。

 10月27日の社会保障審議会で厚労省は九月度のマイナ保険証の利用状況を発表。利用率はさらに下がり4・54%となっている。

 日医の松本会長は「健康保険証を廃止することは法的に決まっており、ここを変えるのはもう難しい」(9月20日)と表明しているが、国民や医療機関負担や不安をかけている政府施策と低調な利用率を鑑みればもう少し国民等に寄り添う見解表明が期待される。
 
関東ブロック 会長・理事長懇談会「保険証存続を求める」決議
 10月29日に保団連関東ブロック協議会は会長・理事長懇談会を開催し、「国民皆保険制度を堅持するため、現行の健康保険証の存続を求める決議」を採択した。
 決議では、国民の間における健康保険証廃止への根強い反対や深刻な不安感が浮き彫りとなっていること、健康保険証の廃止方針を直ちに撤回するとともに、トラブルが発生した際の対応のため、国民に健康保険証の持参を広く周知すべき、誰もが安心して医療を受けられるように、現在の健康保険証を存続させて、国民皆保険制度が堅持されることを強く求めている。
 

 

■オンライン資格確認に関するトラブル等会員アンケート報告

 協会が会員3,426人を対象に実施したマイナ保険証によるオンライン資格確認に関するトラブル等会員アンケート結果を報告します。
 調査の結果、オンライン資格確認システムを運用していると回答したのは72%。うち72%でトラブルがありました。内容(複数回答)は、「患者情報が表示されない」(53%)、「受付時の混雑」(41%)、「システム障害」(35%)などとなっています。
 詳細は下記のPDFをご覧ください。
 

■マイナ保険証を使わないと窓口負担が増えるって本当!?

 
 
 
 
 

「保険証廃止なんてあり得ない!保険証を存続させよう!署名にご協力を!!」について

 3月25日(土)の埼玉県内の朝刊(読売、朝日、毎日)各紙に、署名用紙つきのチラシを折り込み配布しております。保険証が廃止される問題等についてご紹介をしました。
 各紙を講読されている皆様におかれましては是非ご高覧ください。
 チラシは以下でもご覧いただけます。
 

健康保険証の存続を求める署名にご協力ください

2023年3月24日
 政府は3月7日、現行の健康保険証を廃止してマイナンバーカードに一体化する法案を閣議決定しました。現在開会中の国会に法案が提出される見込みです。

 健康保険証を廃止により多くの問題が生じます。
 現行の保険証に代わるマイナ保険証(5年ごとの更新)にしても、新設される資格確認書(有効期限1年の想定)にしても、申請手続を必要とします。

 政府はマイナンバーカードで受診することのメリットを強調していますが、現状では患者さん、医療機関の双方にとってメリットよりもデメリットの方が多くなります。
 マイナンバーカードを利用したい患者さんは利用いただくにしても、現行の保険証をわざわざ廃止する必要はありません。

 健康保険証は国民の財産であり、国民皆保険制度を根幹といえます。
 私ども埼玉県保険医協会では、保険証の存続を求めて国会に請願していく取り組みを行ないます。
 何卒ご協力を賜りますようよろしくお願い申し上げます。


以下にご送付ください。
〒330-0074 さいたま市浦和区北浦和4-2-2-5F
埼玉県保険医協会 署名担当

■健康保険証を廃止しないことを求める請願署名 PDF
 
 

■3月23日(木)12:30~13:30
 「3.23保険証廃止法案は撤回を」国会内集会(WEB)のご案内

 3月7日に保険証の廃止を含む「マイナンバー法改正案」が閣議決定されました。保険証が廃止されれば「マイナ保険証」にしても、「資格確認書」(有効期限1年)にしても国民は自らが「申請」しなければなりません。今後、医療機関の窓口では「資格喪失」や「無保険」扱いが激増することが懸念されます。
 保険証を廃止しなければならない理由はどこにもありません。本国会内集会では、保険証の存続に賛同する国会議員が駆けつけ挨拶します。

 衆議院第2議員会館多目的会議室で開催される緊急院内集会の模様はこちらからご覧ください
 

オンライン資格確認義務化撤回運動にご協力いただきました皆様へ
署名と手書き意見に御礼
義務化の撤回運動は継続します

理事長 山崎 利彦

2023年2月5日 埼玉保険医新聞より(一部修正)
 昨年12月末の中医協は酷いものでした。
 多くの開業医が四月義務化に反対の意向を持っているにも関わらず、義務化の是非すら議論することなく6つの経過措置が示され結論に至りました。
 協会では昨年秋から、県内の開業医の皆様方に義務化撤回と保険証廃止の撤回を求める署名の協力を呼びかけてきました。1200筆を超える署名とご意見は、国会議員等に届け、特に「手書きの意見」は最終的に580人からお寄せいただきましたので、国会議員の他、中医協委員や厚労省、デジタル庁、医療DX推進本部、埼玉県や県議会議員等にも提出し、医療現場は拙速な義務化を求めていないことを訴えました。ご協力いただきました皆様方には御礼申し上げます。

 しかしながら、12月の2度にわたる中医協では診療側(医師会、歯科医師会、薬剤師会)の委員から、開業医の現場の声が紹介されることはなく、国の義務化推進方針に「異論はありません」と発言にするに留まりました。
 これを受けたかのように、他の委員からは「半年の経過措置を再延長することは認められない」「元々義務化は四月が開始だった。どうしてできないのか」などの発言が相次ぎ、医療界には義務化の推進が強く求められました。

有名無実のシステム
 オンライン資格確認システムは原則「四月義務化」ですがこれは有名無実です。
 機器の配備すらできておらず、全ての患者が受診の都度オンラインで資格確認を行えるような医療機関の受付体制も患者の理解も進んでいません。協会はこれまでも、取り入れたい医療機関とマイナ保険証を利用したい患者が資格確認システムを使用することで様々な事例集約をはかる一方、システム導入が困難な医療機関には参加を強要しないことが医療現場を混乱させない方策であると国会議員や厚労省に訴えてきたところです。この方針は今後も継続し、六つの経過措置が現場本位で運営できるよう要請してまいります。

 併せて、保険証廃止の撤回を求める運動も進めていくことといたします。保険証の持参によって初診時に(四月からは再診時にも)算定できる加算点数がありますが、こちらは問題点を厚労省等に訴えてまいります。(「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」は医療を歪める)

 会員の皆様方には引き続き協会の二つの運動にご参加、ご協力くださいますようお願い申し上げます。
 

解説
「保険証廃止とマイナ保険証普及」政策
「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」は医療を歪める

2023年2月 埼玉保険医新聞より
 「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」を算定している医療機関は少ないので、要件や内容は熟知されていないと思われる。
 しかし、一般メディアでも「保険証よりマイナンバーカードを持っていた方が一部負担金は安くなる」などと昨年十月の導入時に話題になったことは記憶に新しいだろう。この加算点数は、12月23日の中医協で、オンライン資格確認システムを普及させるための時限措置として、4月から保険証で受診した場合に点数がさらに引き上げることが決定されている。
 具体的には、①保険証での受診時の点数が2点引き上げられ、②保険証での再診時に新たに2点を算定できるようになった(下表)。
 しかし単に加算点数の引き上げとして喜べない問題を含んでいる。


 協会理事会では、本加算については、①問診という医療行為において政府の宣伝広報を振る舞うことが求められている点、②診療報酬の拡充を患者負担の増大の元凶のように位置づけている点が問題であると検討をしている。
 本加算点数を算定すると、保険証を持参する患者から窓口負担金を多く受領しなければならないという問題を考えていきたい。

①政府の政策宣伝に「問診票」を利用し、医療行為へ過剰介入

 「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」の算定要件には厚労省が定めた様式の問診票を使用することが含まれている(下図)。
 その中には、問診とは関係しない「マイナ保険証等を通じて診療情報を取得・活用することで質の高い医療の提供」や「マイナ保険証を積極的に利用いただきたい」といった政府の政策を宣伝する文言が記載されていることをご存じだろうか。
 初診時の問診は、「診断学」の一丁目一番地であり、患者に必要な医療を提供するために医師・歯科医師が患者の個別具体的な症状を確認しながら進めていく重要な医療行為である。問診項目は、患者の症状に応じて医師・歯科医師に委ねられている。
 医師・歯科医師の裁量である問診項目を、診療報酬点数表の様式として明示し、算定要件化しているのが「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」である。こうした医療への過剰介入ともいえる異常な事態に対して、加算点数が創設された昨年八月も、点数が時限的に引き上げられた十二月にも中医協では診療側委員から反論や意見は出されずに決定している。
 この「問診票」を使用して加算点数を算定するということは、マイナンバーカードの保険証「利用」を患者に「推奨」しなければならないということだ。医師、歯科医師はここまでマイナンバーカードの普及のお先棒を担がなければならないのであろうか。
 問診票がマイナ保険証の拡大キャンペーンの道具にされるという異常事態が今起きている。

②診療報酬がまるで患者へのペナルティ患者を巻き込んだ歪めた運用
 「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」は初診料の加算点数(二月現在)で、マイナ保険証で受診した方が従来の保険証で受診するより点数が低くなりひいては患者の窓口負担も少額になる(図表参照)。
 すなわち、患者にとっては、従来の保険証で受診する方が窓口負担が高額になってしまう。患者を金銭的な観点からマイナ保険証による受診に誘導しようとしているのである。
 問題点はメディア等が窓口負担の金額の差異をペナルティであるかのように報道している点にある。点数の加算により患者負担が引き上がる問題は、社会においては患者のペナルティのようにフォーカスされてしまいがちだ。
 しかし、加算点数の目的として、患者負担の多寡に着目して点数が配置されることはこれまでの診療報酬政策にはなかったものだ。診療報酬の増点をペナルティ的に悪意を込めて設定したのは初めてのことではないだろうか。
 また医療機関からみれば別の観点がある。加算点数の算定要件として、オンライン資格確認システム用のカードリーダーの設置が含まれていることは、国策に参加・協力したことへの「ご褒美」という役割も担っているかのようである。

 診療報酬が「提供する医療内容の評価」といった面で語られず、「窓口負担金を通じたペナルティ的な扱い」とする今回の手法がはびこるようなことにならないよう、今後の診療報酬改定においてはしっかり正していきたい問題だ。3割という窓口負担のあり方を再考していくことも含めて考える必要もあろう。
 

補助金の紙申請 受付期限1月13日(必着)に延期

2022年12月28日
 12月23日の協会FAX案内(4枚送付)にて、中医協でオンライン資格確認原則義務化の導入に関する経過措置などが答申されたことをお知らせしております。また、カードリーダー等の補助金の期限は修正が示されず従来から示されてきた12月31日までに申し込む必要があることをお知らせしておりました。
 保団連が受付期限について厚労省に確認したところ1月13日まで延期することが判りましたので以下のとおりお知らせいたします。
1月13日(金)必着で、紙での申込みができます
<紙での申込み方法>
12月5日付けで、カードリーダーの申込みを行っていない医療機関に、支払基金より送付されている、申込みを促すダイレクトメール(黄色い大きい封筒)を使用します。
 ※中に申請用紙と返信用封筒が入っています

12月16日(金)を締め切りとして、紙での申込ができる旨が案内されていますが、締切をすぎていても受領されることを厚労省に確認しております。
 ※オンライン資格確認の導入意思があるとみなされて、特例補助の対象となります

申請用紙が1月13日(金)必着で支払基金に届けば、12月末日までに申請しているものと見なされます。
 ※申請する用紙は、念のためにコピー等を手元に控えておくことをお奨めします。

(ご留意ください)
 ダイレクトメールの申込みを受けて、支払基金から各カードリーダーメーカーに発注するため、機器の配送が3月になる可能性が高いとのことです。
 厚労省では、カードリーダー機器が届くのを待たずに、システム事業者への発注を検討するよう求めています。
【参考】
補助金(診療所42.9万円を上限に実費)の対象となるカードリーダーの申込み期限は12月31日で、医療機関向けポータルサイトから申し込みをすることとされています。
現在、レセプトオンラインまたは電子媒体で請求している医療機関のうち、①②に該当し、かつ、今回の補助金申請を希望する場合には、ポータルサイトからの申請または、上記の対応が必要になります。
①「医療機関等向けポータルサイト」からアカウント登録ができていない
② 顔認証付カードリーダーの申込みを行っていない
 

本日の中医協総会「原則義務化」譲らず
オンライン資格確認システムの経過措置を答申
2月末までに契約締結を条件に6つのやむを得ない事情に対応へ

2022年12月23日

■ 義務化に反対の意見を一切紹介せず。
  システム推進に賛意を示す診療側。
  支払側は再延期は容認できないと強く牽制

 本日、12月23日の中医協総会でオンライン資格確認システムの審議がされ、「原則義務化」の導入に関する経過措置などが答申されました。
 開業医の多くが疑問や批判的意見を持つ「4月から義務化」という強制策に対する配慮が期待されました。しかし、厚労省の提案に対して、診療側委員からは揃って「異論はありません」とシステムの推進を賛同、肯定し、義務化に反対する意見があることは一切紹介されませんでした。
 療養担当規則の見直しとして、新たに附則が設置され、来年2月末までにシステム導入についてベンダーとの契約締結を要件に、6つの経過措置が決められました。
 紙請求の医療機関については「対象から除外扱い」という前提のまま何ら言及はありませんでしたが、マイナ保険証へ対応するために「簡素な仕組み」に組み込む政府方針のままとなりました。
 ①システム整備は遅くとも2023年9月末までに完了させることや、②光回線ネットワークが未整備の医療機関は整備されるまで、③訪問診療のみを提供する医療機関は2024年4月に運用開始システムを整備する予定、などが示されました(2~4枚目の資料参照)。
 高齢、小規模、などの医療機関に対しては具体的要件が明示されることはありませんでした。「70歳以上」「月レセプト50件未満」などの基準や考え方が、今後、改めて厚労省等から示される見通しです。
 中医協では、現行の保険証を廃止しマイナ保険証が普及させる目的で、来年4月から12月末までの期間限定の新たなマイナ保険証加算を新設することや、同じく来年4月から12月末までの期間限定で、後発品の仕様に関する後発医薬品使用体制加算などを合せて審議し、それぞれ点数を答申しました(点数等については、後日に改めてご紹介する予定です)。
 

会員署名のお願い
オンライン資格確認等システムの義務化撤回署名にご協力ください
埼玉県保険医協会
理事長 山崎 利彦
 会員の先生方におかれましてはますますご健勝のこととお喜び申し上げます。
 さて、ご承知のとおり、政府・厚労省はオンライン資格確認等システムの参加義務化を私たち医療機関に求めています。協会では、次のとおり義務化の撤回を求めて会員連名の要請署名に取り組みます。
 つきましては、別紙の署名項目にご理解の上、署名にご協力いただきますようお願い申し上げます。
 

1人の閉院・廃業も出さないよう要望いたします
(関東9つの保険医協会会長・理事長連名共同要望)」を提出

2022年12月20日
医療DX推進本部長 岸田 文雄 殿
デジタル担当 大臣 河野 太郎 殿
厚 生 労 働  大臣 加藤 勝信 殿

中央社会保険医療協議会 事務局御中
(厚労省保険局医療課長 眞鍋 馨 殿)
1人の閉院・廃業も出さないよう要望いたします
茨城県保険医協会 会長  高橋 秀夫
        栃木県保険医協会 会長  長尾 月夫
        群馬県保険医協会 会長  小澤 聖史
        埼玉県保険医協会 理事長 山崎 利彦
        千葉県保険医協会 会長  岡野  久
        東京保険医協会  会長  須田 昭夫
        東京歯科保険医協会会長  坪田 有史
        神奈川県保険医協会理事長 田辺由紀夫
        山梨県保険医協会 会長  長田 高典
 政府がオンライン資格確認等システムの来年4月からの義務化を発表して以来、さまざまな施策が講じられてきましたが、原則として全ての医療機関に対して①カードリーダーを備え、②マイナ保険証による資格確認作業を求めるという、いわゆる「義務化」を計画通りに4月に施行することは明らかに困難な状況にあります。
 しかしながら12月19日現在においても、政府は何らメッセージや案内を発信しておりません。国民皆保険制度の資格確認手続き方法の大変革を推進する政府に対して、私たちは責任ある対応を求めるものです。開業保険医の仲間たちが廃業閉院を決断し実行しはじめている事態に鑑みて、以下の3点を至急に求めます。
1 4月義務化の撤回・延期をシンプルにアナウンスして、全ての医療機関が医療提供を続けられるようにしてください
 4月義務化や義務化からの適用除外を定めた療養担当規則が9月に発表された際の附帯事項として、「年末に検証のうえ施行期日などを判断する」としていました。厚労省で把握されている通り機器設置数が伸展していない経過をみれば4月からの義務化スタートは不可能です。
 義務化の撤回・延期を直ちに発表することは、開業保険医の混乱と不安を解消する観点からも当然です。また、国民・患者に対して明解に説明をするためには除外要件を複雑に設定することなく、シンプルに「撤回・延期」として示すことが必要です。さもなければ4月に医療現場の窓口にて混乱を来たすことが必至です。
 保険の資格確認という事務手続きにすぎない問題で、長年地域医療を担い患者との関係を築いてきた開業医を医療から排除することのないよう、特段の配慮を求めます。
 
2 中医協を早急かつ明朗に開催し、形式的に審議をしないでください
 「4月義務化」を厚生労働省令(療養担当規則)により規定している以上、手続きを要することは当然と理解しますが、年末を迎えても開催日程が何ら発表されてこない経過より、年末12月28日頃に、本件課題が検討されるのではないかとの憶測も拡がっています。
 早急に開催日程を発表するとともに、多数の開業医が本件の審議をインターネットで視聴ができるよう、配信に関するアナウンスも講じてください。全国には「義務化」に反対している開業医が多数存在しており、本件審議には格段の注意が集まっています。
 
3 二重基準になっている補助金の申込期限の延期を早急に発表することを求めます
 現在の補助金の申込期限は二重基準(年内12月末迄にカードリーダー申し込み、23年3月末に整備完了など)になっており延期を求めます。
 これから申し込みをしても、「23年3月までに機器の設置」などは達成が困難です。期限を延期して、整合性のある申込基準を示すべく「年末まで」とされている申込期限の延期を求めます。また、カードリーダー機器もメーカーごとに在庫状況が異なり、各医療機関の既存のレセコン・電子カルテシステムとの互換性に問題が生じている事例もあります。支給条件の緩和、延期により、各医療機関にとって不具合が生じやすい機器の導入が避けられます。全国的に人数が足りていないシステムベンダーの労力を増やさないことにもつながります。
以上
 

厚労省と支払基金からの周知文書に抗議します
(1都6県保険医協会会長・理事長抗議声明)を発出

2022年12月12日
 12月5日、厚労省と支払基金はカードリーダーの未申込医療機関宛てに「オンライン資格確認導入に向けたご案内」を送達した。
 案内内容は、マイナンバーカードのカードリーダーの申請を求めるものであり、来年4月からは資格確認システムに参加することは、療養担当規則において義務になっていることを強調している。

 既に資格確認システムを利用している医療機関においては、器機の不具合や、照合したデータにエラー例が多数発生することなどが報告されているところであるが、本案内においては、エラーが発生していることなどについて、一切の案内がされていない。
 また、これからカードリーダーの申込をしても、「義務化」の施行期日とされている来年4月迄に器機が設置される見通しはたっていない。工事業者数が全く足りておらず、設置工事が全くすすんでいない。そのような導入状況にあることも全く紹介がされていない。
 これらの内容など3点を不当であると指摘して厚生労働大臣と社会保険支払基金理事長に宛てた、抗議声明が1都6県保険医協会の会長や理事長らの連名で提出された。
 埼玉県保険医協会の山崎理事長他、6協会の会長・理事長により、案内内容の不当性を訴えるとともに、今のままでは来年4月から医療現場において患者とのトラブルが多発することが避けられなくなることから、まずは4月施行の延期を周知することなども求めている。
 508人分のオンライン資格確認等システム導入の義務化の撤回等を求める要望書に添えられた意見綴りも併せて提出した。

2022年12月12日
厚生労働大臣 加藤 勝信 殿

社会保険診療報酬支払基金
   理事長 神田 裕二 殿
厚労省と支払基金からの周知文書に抗議します
茨城県保険医協会 会長  高橋 秀夫
        群馬県保険医協会 会長  小澤 聖史
        埼玉県保険医協会 理事長 山崎 利彦
        千葉県保険医協会 会長  岡野  久
        東京保険医協会  会長  須田 昭夫
        神奈川県保険医協会理事長 田辺由紀夫
        山梨県保険医協会 会長  長田 高典
 12月5日付けで医療機関宛てに「顔認証付きカードリーダー申請のご案内」が送達されました。
 補助金の期限を知らせる最終通知の体裁を取りながら、療養担当規則において来年4月からオンライン資格確認システムの導入が原則義務化になっていることのみを殊更、強調して申請を急かしています。しかしながら対象医療機関に対する判断材料が適切に提供されておらず、12月5日時点における行政機関からの周知書面としては著しい偏向があります。主に以下3点の理由から不当な書面と言わざるを得ず、厚労省と支払基金に対して抗議いたします。
1. 9月5日に療養担当規則を発表した後、10月に政府・デジタル庁が保険証の廃止方針を発表しています。
 この政府方針の転換により、療養担当規則上で義務化から除外扱いとされた紙請求の医療機関に対して、新たに「簡素な仕組み」によりオンライン資格確認に参加を求める方針であることが示されています。療養担当規則における除外対象要件が実質的に反故にされたことになります。このように除外対象を反故にした事実経過の説明をせずに、義務化の面のみを強調していることは不当です。
 
2. 機器を設置している医療機関数は伸び悩んでいます。申込みをしている医療機関においても4月迄に設置が間に合わない機関が多数見込まれている事実、現状についての説明が全くされていません。「原則義務化の期限に間に合うように~」との記述は、12月5日の段階で担保されません。4月から義務化の運用が困難なことは、厚労省の担当職員や支払基金関係者なども認めているものです。事実に反する説明をしており不当です。
 
3. 11月には想定外のカードリーダーの不具合が立て続けに発生しています。運用中の医療機関ではカードの認証が出来なかったり、照合データにエラーが生じる経験をしている開業医が、私たち保険医協会や全国保険医団体連合会の調査では4割から5割に及んでいます。
 また、設置したカードリーダーと自院の既存システムとの相性に不具合が生じている経験例や、カードリーダーの品不足により、自院のシステムとの不具合が生じるメーカーのカードリーダーを導入せざるを得ない事例、国からの補助金上限には収まらない事態例も多数報告されています。こうした事実についての釈明を伴いながら、案内をすることが最低限必要です。12月5日現在の運用状況を隠しながらカードリーダーの申請申し込みを促す手法は不当です。
 そもそも、厚労省は9月以降、機器に不慣れであったり、環境が整わないなどの医療機関に対して、何ら救済の方途を示していません。そのために、廃業閉院に踏み切る医療機関が現実に現れてきています。上記事情を鑑みれば4月施行の延期を周知していくことこそがシステムを推進する責任者である厚労省が本来なすべきことです。
 厚労省の不誠実な導入姿勢は、資格確認システムそのものへの不信を益々高めます。そもそも、カードリーダーを申請している医療機関においても、積極的に「賛成」の意向を示している医療機関は1割にも達していません。医療現場において忌避感の強い制度を強要すれば、来春以降に様々なトラブルが生ずることは避けられません。

 システム導入を強行することなく医療現場でのトラブルが発生しないような方向に進めることが求められています。本案内文書に抗議するとともに、早急に延期の案内周知をすることを求めます。また、進捗状況の確認と検証に基づいた再提案を行うことを求めます。
以上
 

日本医師会 長島常任理事宛に要望書を提出

2022年12月2日
 338人分のオンライン資格確認等システム導入の義務化の撤回等を求める要望書に添えられた意見綴りと併せて、要望書を提出しました。

2022年12月2日
公益社団法人 日 本 医 師 会
長島 公之 常任理事 殿
埼 玉 県 保 険 医 協 会
 理 事 長 山 崎 利 彦
オンライン資格確認等システムの来年4月「義務化」の撤回に
ご尽力を求める要望書
 拝啓 貴職の国民医療向上へのご尽力に深く敬意を表します。
 さて、ご承知のとおり医療機関に対してオンライン資格確認等システムの導入を来年4月から原則義務化とする政府方針が発表されて以降、とりわけ8月の三師会と厚労省による合同説明会以降、開業医の周辺はカードリーダーの申請を促す様々な動きに翻弄されてきております。
 11月20日において、申請数こそ20万1396施設・87.6%と発表されておりますが、準備機関数は9万5806施設・41.7%と、8月当時の導入計画を大きく下回っており、もはや4月からの義務化が不可能な状態にあることは明らかです。しかしながら、政府・厚労省は、療養担当規則の発効にともなう附帯意見を年末に発表する想定があることから、4月義務化を修正発表することを見送り続けています。

 既にカードリーダーはメーカーによっては在庫がなくなっており、4月義務化に間に合わせるがために、開業医によっては自院のシステムと相性の悪いカードリーダーを契約し、補助金内に収まらない例なども生じています。
 また、システムを利用している医療機関では、機器が作動しない、データを照合しても一致せず患者本人の確認ができない、などのエラー事例が経験されています。こうした事例について、厚労省は収集・把握していると国会で答弁しておりますが、システム利用者たる開業医になんら周知をしておらず、大変、不誠実です。
 11月には既にカードリーダーの不具合で機器が起動しないという事例が、ポータルサイト上で連日発表されるなど、システムそのものへの信頼が低下しております。また、ベンダーらに個々に聞いても、今の状況のまま全医療機関が一斉にシステムに参加していくことは、困難であるとされています。
 一刻も早く、4月義務化を見直すことが求められております。

 一定年齢を超えた場合や、小規模、通信回線環境が確保できない場合など、医療機関の責に寄らない例や、訪問診療先など、明らかにシステム利用ができない例など、は義務化から除外される検討がされているのかもしれませんが、「保険証廃止」という政府方針のもとでは、数年後にシステム導入を求められてしまい、結果的には対応できない医療機関は廃業・閉院を選択せざるを得なくなります。
 医療の本質とは無縁な本施策が原因で、開業医が廃業・閉院を選択することは看過できません。

 医療DX推進会議の進め方は従来の政府とは異質のものです。医療界からは緩やかなシステム導入や、明確な見通しの提示や業界内での共有を求めていくべきではないでしょうか。

 厚労省は、オンライン資格確認等システム義務化の推進理由の一つに、貴職の賛同、推進姿勢を挙げております。地域の開業医に対して安心を与え、1人の廃業者・閉院者を出さないためにも、早急に、4月義務化の撤回を英断いただきたく、当方に寄せられている埼玉県内の開業医の声を添付して本状を提出する次第です。ご検討のほどよろしくお願い申し上げます。
敬具
    ○ オンライン資格確認等システム導入の義務化の撤回等を求める要望書に添えられた意見綴り
以上
 

厚生労働省に、ひとりの廃業者も出さないよう4月義務化の撤回など
至急対応を求める要望書を提出しました

2022年12月7日
 338人分のオンライン資格確認等システム導入の義務化の撤回等を求める要望書に添えられた意見綴りと併せて、要望書を提出しました。

山崎利彦理事長(右から3人目)、宇佐美保団連副会長(右から2人目)らが厚労省担当者に要望書を提出(22年12月7日)


2022年12月7日
厚生労働大臣 加藤勝信 殿
厚生労働省保険局長
       伊原和人 殿
埼 玉 県 保 険 医 協 会
理 事 長 山 崎 利 彦
1人の廃業者も出さないようオンライン資格確認等システムの
「4月義務化」の撤回など至急の対応を求めます
 さて、ご承知のとおり四月からの義務化とされているオンライン資格確認等システムの医療機関への導入ですが、施行期日の履行が見込めない状況です。一刻も早く開業医に対して延期などの周知を行い負担を回避することが求められています。
 これまでの経過では、義務化から除外される医療機関を容認するとしても、いずれは「簡易な仕組み」により全医療機関がシステムへ参加することを事実上求めております。こうした対応が困難な医療機関は廃業、閉院をせざるを得ない事態が継続しております。廃業閉院を検討している医療機関に対しても4月からの義務化の延期など適切な周知が求められております。

 また、貴職からカードリーダー設置の申し込みを促す案内をベンダー業者や支払基金などを通じて医療機関に繰り返し行われましたが、未だに申し込みをしていない医療機関は多数存在しています。運用マニュアルをはじめとする運営上のルールなどの説明会も未開催の状況では当然です。責任者の設置など資格確認システムを運営するための周知機会の確保や、システム導入に関する補助金の申請期限が今月中とされている点についても延期をしていくことが制度への参加を促すためには必要です。
 システムへの参加医療機関数の増加に伴いエラーや不具合の報告も増えています。こうした全容に関する周知により、システムそのものの適切な評価を周知することをはじめ、「政府の方針として進捗状況の確認と検証に基づいた再提案」が求められています。

 貴職におかれましては、4月からの義務化は撤回のうえ医療現場が混乱することない対応を至急に講じていただきますよう、下記について特段のご高配を何卒お願い申し上げます。
 1 4月義務化の延期等を至急に発表すること

 1 補助金の申込期限を延期すること

 1 進捗状況の確認と検証に基づいた再提案を行うこと
以上
 

■11月17日(木)12:30~14:00
保険証廃止反対!オンライン資格確認・マイナンバーカード強制反対!
緊急院内集会(WEB)のご案内

衆議院第2議員会館多目的会議室で開催される緊急院内集会の模様はこちらからご覧ください
保険証廃止反対! オンライン資格確認・マイナンバーカード強制反対! 緊急院内集会 - YouTube
 

政府強行
保険証廃止・マイナ保険証へ一本化を発表
「紙請求は義務化から除外」は一転して反故

埼玉保険医新聞22年11月5日号一部修正

 10月中旬に政府が唐突に発表した「24年秋に保険証の廃止」方針により、医療界のみならず日本中が驚き困惑している。
 資格確認システムの義務化に関し8月に開催された厚労省と三師会による合同説明会で義務化の除外対象とされていた「紙請求の医療機関」も事実上、義務化の対象に含まれる事態となった。保険証廃止方針によってこれまでの医療界に対する説明が一転して反故にされた。
 朝礼暮改の方針を示す政府に対し批判や反論の声が開業医の中には着実に拡がっている。
 協会は義務化の撤回に向けて国会議員、県議会、医師会・歯科医師会等へ要請を行っている他、シンポジウムの開催や会員アンケートで9割が義務化に反対していることをメディア等に発表するなど活動を展開している。

◆ 政府内で未検証の廃止方針
 10月13日に河野デジタル相が、突然「24年秋に保険証を廃止」と会見し、翌日には加藤厚労相も保険証の廃止を追認した他、「全医療機関がマイナ保険証に対応」「紙レセプトで請求している医療機関には『簡易な仕組み』での対応を求める」と会見で述べた。
 首相や政府の説明ではマイナ保険証を所持しない国民への対応では、「資格証明書を発行」としたり「別の制度を用意する」としたり、「様々な事例があり関係省庁による検討会を設置する」と説明内容が変遷している。

 しかし、「24年秋に保険証廃止」の期限の根拠は示されていない。
 国民皆保険制度の根幹に着手する政策であるが、10月の政府発表やその後の経過は、省庁間による検証がないままデジタル施策の推進ありきで、医療関係者や国民に対して無責任に「保険証廃止」方針を発表したものだ。
 厚労省は「高齢」「小規模」「閉院間近」「通信環境」など義務化に対応が困難な医療機関には適用除外とする方向性を示唆してきたが、政府全体の方針としていずれも打ち消された恰好だ。

◆ 簡素な仕組のイメージ発表
 現在、厚労省が義務化から除外するとしている「紙レセプト請求」の医療機関も事実上の義務化に含められたことを受けて、10月28日の審議会では、「簡素な仕組みイメージ」を発表。従前からの説明を取り繕っている。具体的な方法はこれから検討するとしている。
●表 義務化の対象外医療機関の簡素な仕組みイメージ 22年10月28日 厚労省
◆ 先人や現場を軽んずる医療DX推進本部

 「保険証廃止」は政府の医療DX推進本部の会合後に発表されている。
 今回の進め方は、長年来先人が積み上げてきた医療制度や実績に敬意が払われていない。地域医療を担当している開業医らを軽んじ、地域医療への理解を示さないまま強行に進められており、従来からの医療行政や政府対応とは全く異質だ。
 医療DXは医療の将来にとって重要な施策であるが、医療者に何ら説明をせずデータヘルス改革がなし崩し的にもたらされることのないよう、政府・厚労省は医療界に丁寧な説明と開業医が安心してシステムに対応できる環境を整備するべきである。


◆ 埼玉県保険医協会 埼玉県医師会、歯科医師会に義務化撤回に尽力を要請

 協会は9月1日付けで県医師会の金井忠男会長と県歯科医師会の大島修一会長宛に「義務化の撤回に向けた尽力要請書」を提出している。
 山崎理事長は両団体を訪問し「義務化に対応できない」としている開業医の救済や、将来のビジョンが不確実なままDXを強制されることは開業医や医療界のためにならないことを訴えた。
 保険証廃止方針によって、義務化の適用除外とされてきた「紙請求の医療機関」が義務化に含まれるなど、医療DX推進本部の方針が医療現場を混乱させているとして、10月31日に改めて「義務化の撤回に尽力の要請」を提出した。

 ◇混乱状況の収束のためにオンライン資格確認等システムの来年4月「義務化」の撤回にご尽力をお願いします
  ・埼玉県医師会宛(PDF)
  ・埼玉県歯科医師会宛(PDF)


◆ 歯科医師会2000人が対応困難
 日本歯科医師会は10月27日に60歳以上を対象に実施したアンケートの結果を発表。
 19.3%が「オンライン資格確認への対応が困難」と回答したとされている。アンケートはカードリーダー申請を厚労省等が強く推奨していた9月16日から1カ月の時期に実施されている。
 結果を受けて、日歯の堀会長は「高齢」「小規模」を義務化の除外とすることや、「僻地」「ネット回線が整備できない建物」については適用除外か猶予を設けるなど療養担当規則の見直しを訴えている、と報じられた。
 開業医の実情や拙速な導入計画に対し歯科医師会からも、政府に対して来年4月義務化の見直しが強く迫られる情勢となっている。
 
2022年10月6日 埼玉県保険医協会
【 アンケート実施の背景 】
 オンライン資格確認等システムについては、2019年の国の計画では、2023年3月までに国民のほとんどがマイナンバーカードを所有し、保険医療機関の全てがカードリーダーを備える体制整備を予定していた。これに基づき、システムの本格導入は2021年3月としていたが、様々な準備不足で多数のエラーが指摘された結果、延期となり同年10月を本格開始時期と定め診療所の参加率5%台からスタートさせた。
 マインナンバーカードの保有と同様、オンライン資格確認等システムへ参加することは、保険医療機関が、そのメリットやシステムを理解のうえで任意であることとされてきた。しかし2022年6月に出された「骨太方針2022」にて、任意参加だったものが2023年4月からシステム参加を義務化とすることなどが決定された。以降も厚労省から「義務化」が強調されるが開業医たちには大きな混乱と動揺が拡がっている。

【 本アンケートについて 】
 本アンケートは今年8月下旬から9月上旬の時期に開業医会員を対象として、「4月からの義務化」に対する評価や、各医院のシステム導入の状況などを設問として集約した。
 開業医の9割が、4月からの義務化に反対し、システムの参加は「任意参加でよい」とする回答が多数となった。また既に運用を開始している場合でも、医科歯科半数程度は「国の施策なのであるため」に対応していると回答。メリットを感じている医療機関は少ない。運用中の49%で「トラブル・エラーを経験している」としている。
 厚労省は多くのトラブルが生ずるシステムであることを承知しているが、周知しないままアンフェアに「義務化」を強調してシステムを推進している。来年四月には医療機関窓口で多くのトラブルが生じる可能性が高い。
 4月からの「義務化」に対応できない医療機関は、個別指導(保険医療機関に対する行政指導の一種で、多くの保険医療機関には負担となっている)に選定されたり、指定取消とされることが示唆されていることから、政府方針が変わらないならば、「廃業せざるを得ない」という意見も少なからず寄せられている。

 12月に政府は「義務化」の範囲や施行期日の改めて示すとしており、開業医の声を真摯に受け止めて地域医療に混乱を起こさないような見直しを求めたい。
 

オンライン資格確認等システム 4月義務化に9割が反対
運用者の半数でトラブル等を経験! 厚労省から説明なし

埼玉保険医新聞 2022年10月5日号一部修正
【表1】
 来年4月からのオンライン資格確認等システムの義務化に「反対」しているのは医科開業医87%、歯科開業医88%と、約9割にのぼることが協会の会員アンケートより判明した(表1)。
 義務化に反対しているのは「導入を検討中」「これから検討する」などカードリーダー申請をしていない会員のみならず、既に「システムを運用している」など実践中の会員においても大多数であった。また、「システムを運用している」会員のうち半数が「トラブル・エラーを経験している」とした。
 協会は引き続き「義務化の撤回」を求め、会員や県内開業医に署名協力を呼び掛ける他、関係者に撤回協力を求めていく。

◆「義務」は機器の設置のみではない
 8月の厚労省と三師会の説明会では、導入している各地の医療機関において多くのトラブルが発生していることは一切紹介がされていなかった。多くのトラブル事例を紹介せずにシステム導入を強制的に進めている厚労省の姿勢はシステムそのものへの信頼を損なうことにもつながるものだ。
 アンフェアな義務化の推進は、医療現場に大混乱や事故が多発することが見込まれよう。
 資格確認等システムの義務化で来年4月から開業医に求められているのは、マイナ保険証を読み取るカードリーダーを医療機関の窓口に備えることのみではない。患者がマイナ保険証を提示した場合には必ずカードリーダーを使用して資格確認をすることが義務として求められている。

◆来年4月にマイナ保険証で資格確認できなければ療担違反
 厚労省はカードリーダーの申請数を増やそうと申請を正規の方法によらず医師会、歯科医師会等に代行を委ねる方法を認めている。しかし来年4月以降にマイナ窓口で保険証の資格確認手続を第三者に代行を委ねることはありえない。資格確認ができなければ、厚労省の説明では療養担当規則違反となり、「個別指導」や「指定取消」にもつながっていくことになる。
 システム利用にあたっては「利用規約」や「運用マニュアル」に則って患者に対応することも求められてくる。
 義務化は、代行申請をした保険医療機関に著しい負担を課すことにもなる。義務化の撤回はどうしても必要だ。

◆少なくない会員がシステム申請を様子見
 アンケートは8月下旬から9月上旬に実施した。この時点におけるシステムの導入状況は「まだわからない」は医科22%、歯科23%、これに「検討していない」「導入を検討中」とを併せると医科53%、歯科47%と約半数が申請を決めていない。
 一方「運用中」と「運用はこれから」とシステム設置が完了している会員は、医科と歯科いずれも21%であった。

◆医科の半数でトラブルを経験
 厚労省の資料にはトラブル報告に関する集計等は示されていない。
 協会アンケートでは既に運用中の会員のうちトラブルが「あった」は医科49%、歯科17%であった(表2)。

【表2】
◆トラブル事例 寄せられたコメントより
 医科のトラブル例の内訳では「データ関連」が55%、「機器のトラブル」40%と続く。
 「反応が遅すぎて受付業務が滞る。遅すぎて患者からも不満が多い」(精神科・60代)、「うまく作動しなかったこともあったため、通常は全く運用していない」(内科・70代)などの機器の問題をあげる意見や、「健保組合へ本人が扶養家族のマイナンバーを登録していない人が多く、有効な保険証が無効と表示されます」(内科・60代)、「資格があるのにないと表示してくることが時々あり、患者に確認する時に不快な思いをさせてしまいます」(整形外科・60代)、「保険証の入力が全角になってしまう。レセコンは半角で入力なので再度入力し直す必要がでてきた」(歯科・50代)など照合するデータに問題があると指摘する意見もある。
 「電カルの調子が悪くなりました」(内科・50代と)と新たな機器の接続によって電子カルテに不具合が生じる例も報告されている。
 本トラブル例の報告は、任意でシステム参加を決めた会員からのものである。トラブルやエラーに備えている会員層である。
 パソコン操作等に不慣れな医療機関においては業者に対応を委ねることになろうが、最終的には利用規約や運用マニュアルに基づき自己責任で対処解決が求められる。「完全義務化されれば、保険診療を辞めるかもしれない。義務化は延期してほしい」(内科・60代)と60歳代と70歳代の会員の中には「義務化なら廃業する」との意見もある。

【表3】
◆システム参加は「任意でよい」が多数
 4月義務化の是非では「賛成」が極少数であることが特徴である。反対回答では「4月は尚早」が医科25%、歯科28%で、「任意でよい」としたのは医科62%、歯科60%と2倍にのぼった。
 クロス集計では義務化に反対しているのは「導入を検討中」「これから導入を検討」などカードリーダー申請をしていない会員のみならず、既に「システムを運用している」という実践中の会員まで全てのカテゴリーにおいて大多数であった。(表1、2)。
 全員一律にシステム参加を強制・義務化するという方法には強い抵抗感が示されている。
◆システムへの懸念
 「ランニングコスト増」「カード紛失・漏洩」「窓口の事務負担増」「必要性を感じない」などが上位の回答となっている。本来、厚労省はシステムへの参加率を高めるために、こうした懸念に応える誠実な施策と対応が求められていた。
 国民のマイナンバーカードの普及が不十分な状況にありシステムを導入しても「導入4カ月で利用患者は一人」(歯科・60代)という声にみられるとおり、必要性は当面高まることはないであろう。

◆デメリット多数
 システム参加のメリットをあげる回答数に対し、2倍の数のデメリットが挙げられていることが大きな特徴である。
 医科歯科とも同様の傾向で、便利の筆頭は「返戻防止」で「保険証入力が不要」が続く。
 デメリットは前項の懸念事項に共通するものが多い。「患者への説明が困難」「県単独助成事業で利用不可」などが加わる。

◆院内掲示の活用を
 本紙には「保険証を提示ください」とした院内掲示物を折込んでいるので、患者への周知啓発用に活用されたい。追加を希望の会員は協会事務局まで連絡されたい。

◆義務化撤回署名に協力を
 9月から取り組んでいる署名は既に国会議員に提出している。10月からは会員に加えて協会に未加入の開業医にも協力を呼び掛けている。署名用紙は郵送やFAXで案内しているのでぜひ協会までお寄せいただきたい。

◆義務化はなぜ来年4月?
 これまで厚労省等から義務化の開始を来年4月にしなければならなかった理由は一切説明されていない。
 元々政府は2023年3月までに、ほとんどの住民がマイナンバーカードを所持し、マイナ保険証を扱うカードリーダーを全医療機関に設置することを計画していた。
 しかし、国民のマイナンバーカードの所有率は今年8月末で全国平均47・4%と半数にも満たないのが現状だ。最大2万円分」のポイント付与を宣伝して普及をはかるが進まず、ポイント付与期限を12月まで延長した。
 6月に閣議決定した「骨太方針2022」には「資格確認システムを医療機関に原則義務化」「保険証の廃止」の他、「全国医療情報プラットフォームの創設」「電子カルテ情報の標準化」が掲げられている。全国の医療機関をネットワークで結び電子カルテなどもつなげていく壮大な計画遂行のために全医療機関の参加を当初計画の2023年4月に拘っているといえよう。
 9月下旬に自民党厚労部会長は資格確認システムを「医療DXの大きな基盤になってくる」と強調したことが報じられている。日本医師会の担当役員からも「オンライン資格確認だけの機能であれば、医療機関にとってのメリットはさほど大きくないでしょう」「本当に重要なことは、全国の医療機関が安全につながるネットワーク基盤ができること」と述べている。
 これまでは「医療事務が簡素化される」などのメリットを誇張してきたが、政府の目的はDXの基盤作りにあることが次第に明るみになってきた。

◆国会未審議で法的根拠に乏しい
 厚労省はオンライン資格確認の義務化を療養担当規則の新設によって実施しようとしている。保険医療機関に対する義務化を国会審議もなく決定している手続は不備がある。
 具体的には健康保険法における資格確認に関する63条の条文改定がされていない。省令である療養担当規則のみを改定しているが、法令上は患者の資格確認は従前どおり保険証でもマイナ保険証でも医療機関の任意で選択できる解釈を変更していないままだ。10月からの国会では義務化の妥当性などの審議が求められよう。
 

オンライン資格確認等システム参加「義務化の撤回」を求める

開業医の権利侵害明白 できなければ指導・指定取消まで

埼玉保険医新聞 2022年9月5日号 一部追加修正
 9月5日、加藤厚労大臣はオンライン資格確認のシステムへの参加を「来年4月から原則義務化」とする等の療養担当規則(以下、「療担」と略す)を発令した。
 本紙では政府・厚労省等から発表されている情報を紹介するとともに、協会では「療担」の内容に今後修正が見込まれることから「義務化」撤回を要請していくことや、12月までは「様子見」を推奨するなど、今後の協会の取組方針を紹介する。
 10月1日からの「マイナ保険証」提示時の診療報酬改定も正式に告示された。
◆義務化「撤回」を各方面に要請
 8月中旬から厚労省は書簡や架電により資格確認システムへの参加を「義務化」であるとし、医療機関に対してポータルサイトへの登録や機器の申込を募ってきたのは「療担」の変更予定を根拠にしたものだ。唐突な事態に対し協会には会員から困惑、義憤、相談、など様々な声が寄せられてきている。

 8月度の協会理事会では会員からの声と、厚労省等の説明などを総合的に検討。コロナ禍に加えて、義務化に対応できない医療機関には個別指導や指定取消まで示唆する政府・厚労省に対して「義務化」の撤回を求めることとし、会員には12月まではこれまでどおり「様子見」を呼び掛けることとした。これまでの主な取り組みは次のとおり。

 8月下旬より「資格確認等システムの導入義務化」について、医療機関における取組み事例や「義務化の評価」に関する会員アンケートを開始。圧倒的多数が「義務化に反対」としており、今後、開業医現場の声として対外発表していく予定である。

 また9月5日には、首相、厚労相、中医協会長等に「義務化」を規定した「療担」への抗議と撤回、「義務化」の撤回要請を提出。保険医療機関に「義務化」を強いる必然性の議論が皆無であり、開業医の権利を不当に侵害する問題などを指摘した。

 9月1日には、県医師会と県歯科医師会に「撤回に尽力」を求める要望書を提出した。現在開業医会員には「資格確認システム参加の義務化撤回」「保険証廃止の撤回」を求める署名の協力を求めているところである。
◆12月までは引き続き「様子見」を推奨
 10月15日に「義務化シンポジウム」に参加を
 8月10日、中医協は「療担」改定案を答申した際に意見を附帯しており「年末頃に導入の状況について点検を行い、地域医療に支障を生じるなど、やむを得ない場合の必要な対応について、その期限も含め検討を行う」とし、「療担」の内容は修正が見込まれている(図1)。医療界のシステム参加状況次第で、4月義務化は変更せざるを得ないことを認めている。
  図1 療養担当規則の答申書附帯意見抜粋
 
1  関係者それぞれが令和5年4月からのオンライン資格確認の導入の原則義務化に向けて取組を加速させること。その上で、令和4年末頃の導入の状況について点検を行い、地域医療に支障を生じる等、やむを得ない場合の必要な対応について、その期限も含め、検討を行うこと。
 
3  オンライン資格確認を医療DXの基盤として、今後、患者の同意の下でいかすことができる患者の健康・医療情報が拡大し、さらに安心・安全でより良い医療が受けられる環境が整備されていくということが、患者・国民に広く浸透するよう、関係者が連携して周知を図っていくこと。
 これから申込を検討している会員には、補助金の申請期限なども考慮しつつ「12月までは様子見」を引き続き推奨することとしたのはこのような背景からである。協会では、10月にシンポジウムの開催を予定しており、こちらを見てから判断されたい。
◆義務化の必然性は
 8月24日に開催された厚労省と日医、日歯ら三師会との合同説明会の中では「オンライン資格確認は『安心・安全で質の高い医療を提供する』医療DXの基盤となる仕組み」と解説がされ、システムへの申込を急ぐよう依頼が繰り返されていた。
 しかしながら、保険医療機関に対し、「義務化」によらなければならない事情があるのかなど「義務化」の必然性については一切説明がなかった。義務化の詳細も説明がなかった。
◆義務化の中身は
 中医協が8月10日に「療担」改悪を答申した際に、示されていた概要は次のとおり。
 (1)原則として2023年4月から資格確認システム参加を義務
 (2)紙レセプト請求の医療機関のみ義務化の対象外
 (3)設備補助金を引上げし期間を12月まで延長
 このうち(1)の詳細として、来年4月より①マイナ保険証を持参する患者にはオンライン資格確認システムを用いること、②システム対応していることを院内掲示すること、が求められている(図2)。
  図2療養担当規則が示しているポイント
 
1.2023年4月から資格確認システム参加を原則義務
【4月から求められること】
① マイナ保険証を持参する患者にはオンライン資格確認システムを用いる
② システム対応していることを院内掲示する
 
2.紙レセプト請求の医療機関のみ義務化の対象外
 
※「1」に対応をできない医療機関は「個別指導」の対象となり「指定取消」になることも厚労省は示唆
◆マイナ保険証を提示されたら
 機器や回線を備えるのみでなく、患者からの求めがあった際に「必ずマイナ保険証を取り扱う」ことは、多くの医療機関にとっては大変な負担になることは間違いない。「新型コロナで窓口負担金の説明が増えているのに、そのうえ来年からマイナ保険証の対応義務化などやめてほしい」(50歳代・診療検査医療機関の会員)などの声が協会には寄せられている。
 また、「取扱医療機関」であることを院内掲示すれば、使用方法に詳しくない患者に説明する役割が増すことにもなるであろう。

(3)設備補助金については、補助額が引き上げられ、申請期間も12月まで延長された。

 【医療機関等への補助金の見直し】
 表の適用は、
○今年12月末までに顔認証カードリーダーを申し込む
○23年2月末までにシステム事業者との契約を結ぶ
○23年3月までに事業を完了させ、資格確認システムを開始
○23年6月末までに交付申請をする
 とされている。
◆現実的でない申請目標
 義務化の対象は紙レセプト請求以外の医療機関で、医科診療所の96.5%、歯科診療所の91.4%となる。
 8月28日現在、全国でシステムが改修が完了している施設は医科診療所で23.2%、歯科で24.0%、埼玉県では医科診療所25.3%、歯科19.3%に過ぎない(下表)。
 厚労省が目指している導入数は、12月末に全国で18万6,000の施設がシステム完了になっている状態であると8月に発表され、8月末時点の目標は9万5,000施設とされている(図3)。8月段階の実件数は7万5,000件であり、目標に対して既に2万件超も下回っている。2023年3月末までに概ねすべての医療機関がシステム導入を目指すのは現実的でないことが判る。
◆義務化によって個別指導、指定取消も
 8月24日に開催された厚労省と日医、日歯ら三師会との合同説明会の中で、水谷忠由厚労省医療介護連携政策課長は、義務化に応えられない医療機関は「個別指導」の対象となり「指定取消」になることを示唆した。(図4
 「療担」に「義務化」と定められてしまえば、オンライン資格確認システムという、医療の本質とは無関係な受付の一つの手法にすぎない事項に対応できないだけでも、保険医療機関は「個別指導」に選定されたり「指定取消」にされるという。
 「療担」から義務化を撤回しなければこのような理不尽がまかり通ってしまうのである。
 厚労省や三師会は今年5月まではシステム参加を「任意」として推奨してきた。その後に「義務」として強要することに方針を急転したが、非常に大きな転換である。

 ●図4  個別指導や指定取消になりうる 水谷忠由医療介護連携政策課長

 オンライン資格確認の導入を保険医療機関・薬局の義務とすること、これにつきましては、保険医療機関および保険医療養担当規則、いわゆる療担規則等において規定をすることとしています。療担規則に違反をするということは、保険医療機関・薬局の指定の取り消し事由となりうるものですので、それぐらい重要なこととして、導入をしていただきたいという風に考えています。療担規則は、保険医療機関・薬局の責務を規定するものですので、遵守をされていない場合には、まずは地方厚生局による懇切丁寧な指導などが行われることになりますが、具体的には、個別事案ごとに適宜判断していくということになります。
◆「義務化」の手法はこれからも続く
 今回の「資格確認システムの義務化」は、これからの医療DXの入口、導入にすぎず、今後もシステムを利用して医療情報データの集約化をすすめたり、全国的なネットワークを構築することなどが説明されている。
 問題になるのは政府のシステム推進方針に対し医療界から何ら制限をかけていないことだ。今度の「義務化」の手法をみれば今後も医療情報の管理や利用、患者への対応などで、保険医療機関に費用負担をさせながら、様々な「義務化」を「療担」で次々に強いることが容易に想像される。
 こうした手法はデジタル技術を口実として、地域の開業医に対して過重な負担を強いるのみならず地域医療から排除しかねない。
◆保険医の声で義務化の撤回を
 「個別指導」や「保険医療機関の指定取消」まで示しながら、システム導入を推し進める政府の姿勢に対し、会員からは協会に「おかしい」「こんなこと出来るわけがない」と疑問や義憤の意見や「4月の義務化に対応できない。どうしたらよいか」「参加をした方がよいのか」と困惑している意見が寄せられている。

 現在集計中の会員アンケートでは「義務化反対」の回答が圧倒的多数である。医療現場からは強制的な手法に強い不満が顕れている。
 今回の「義務化」が定着してしまえば、①医療機関に対してコロナ禍にありながら、著しい負担が強要される、②医療機関に一方的に義務を強いることで、不当な個別指導や指定取消が正当化される、ことになる。
 しかしながら、医療機関がシステム参加を強要されることが正当化されたり、必然性が認められるような議論はどこでも全くされてきていない。大変に理不尽である。

 以上により、埼玉県保険医協会では全国各協会、保団連らとと供に、今年の年末に向けて、開業医師・歯科医師による「義務化の撤回」署名に取り組み、政府や国会議員等に事態の是正を求めていくこととした。一方的な開業医の権利剥奪ともいえる「義務化」は撤回を求めるしかない。本ページの署名用紙を返送いただきたい。
 

オンライン資格確認等システム
「本格運用」は10月20日で見切り発車

 厚労省はオンライン資格確認等システムの本格運用を10月20日からと発表しました。
 9月段階でもオンラインシステムに参加する医療機関は極少数で、マイナンバーカードを保険証化している国民も極少数です。
 強行したい目的は「デジタルヘルス改革」と称する、患者の医療データを全医療機関で利活用したり、医療機関の電子カルテを共通フォーム化のためですが、あまりに拙速です。協会は引き続き「様子見」の対応を推奨します。
 この度、1月に会員に配布しました「マイナンバーチラシ」を10月以降もご使用いただけるよう修正しました。埼玉保険医新聞10月号にも同封しています。PDFファイルを掲載しますので、ご活用ください。

 ・ポスター   PDF
 

心配される窓口トラブルの多発
保険証持参を呼び掛ける掲示ポスターの活用を

埼玉保険医新聞 2021年10月5日号より
 9月22日厚労省はオンライン資格確認等システム(以下、OLシステム)の本格運用を10月20日からとすることを示した。3月の本格稼働がシステムトラブルにより延期して以降、OLシステムの本格運用に関するアナウンスは滞ってきた。
 9月段階でもOLシステムに参加する医療機関は極少数で、マイナンバーカードを保険証化している国民も極少数である。新型コロナウイルスの影響や、システム自体の周知不足などの要因によるが、国民皆保険の基幹をなす資格確認の方法で現場に混乱をもたらすことが明らかなまま、本格運用を強行する厚労省や政府の責任は重大といえる。
 強行したい目的は「デジタルヘルス改革」と称する、患者の医療データを全医療機関で利活用したり、医療機関の電子カルテを共通フォーム化のためであるが、あまりに拙速である。

◆ 厚労省の発表によると
 カードリーダー(以下、CR)の申請機関は全国で医科診療所43.9%、歯科診療所48.4%のみ。このうち院内改修などにより本格運用に向け準備が完了しているのは医科診療所5.1%、歯科診療所で4.6%である(七面:図参照)。「プレ運用」として稼働しているのは更に少なくなる。埼玉県はいずれも平均を下回る参加率になっている。

◆ 申請機関数は減少中
 なおCR(カードリーダー)の申請機関数は今年4月が最も多かった。その後申請を取り下げる機関が多数現れてきている。埼玉県内だけで医科診療所が28件、歯科診療所は80件などで163件の減少、全国では2229件の減少となっている。

◆ マイナンバーカードの受診は5%に満たない
マイナンバーカードの交付数は金銭的インセンティブや頻回な宣伝により伸びてきたが、全国平均で37.6%、埼玉県の平均は36.1%である。このうち保険証として利用するための登録(保険証化)を済ませているのは10.9%(厚労省)と極少数で、これは国民全体の4.1%にしかすぎない。カードリーダーを準備してもシステム利用を希望する患者は、現段階では圧倒的に少数である。「本格運用」として、カードリーダーの設置や準備を急がされることがあったとしても、自院の諸事情より冷静に対応いただきたい。

◆ 院内掲示物の活用を
 極少数とはいえ、マイナンバーカードを保険証化している患者も存在する。協会では患者へのアナウンスのために、リニューアルした院内掲示物(左図)を紹介しているのでぜひ活用されたい。追加が入り用の会員は協会まで連絡されたい。


◆ 患者がマイナンバーカードしか持参しなかった場合は
 カードリーダーを備えていない医療機関に受診した患者が、マイナンバーカードしか持参しなかった場合、患者の資格確認ができない。
 この場合、厚労省では「被保険者証忘れと同様の対応とする」と説明している。
 厚労省のいう「被保険者証忘れの対応」とは、「一時的に患者が10割分を医療機関に支払い、後日、被保険者資格を医療機関で確認した上で自己負担割合に応じた額(7割分等)を患者に返す」としている。また、「医療機関等において、把握している資格確認情報等により後日精算とはしない運用も行なわれている」とし、返金作業を患者と保険者間により実施することを求める方法も説明がされている。
 一方では「医療機関の判断により、マイナンバーカードの表面情報を聞き取り、医療費の自己負担分(3割分等)とすることも可能」とも説明がされるなど、OLシステムの準備や周知不足により生ずる医療機関窓口でのトラブルを現場任せにしたいことを示すものといえる。 

◆ 国民への周知
 厚労省は審議会で「すべての医療機関・薬局においてシステムが導入されているわけではない旨、周知を図る」と表明しながら、マイナンバーカードのみで受診する患者に対し注意喚起、周知を行なう方針も示している。
 今後国民に対して「受診する際に、マイナンバーカードで受付できる医療機関かどうか事前に確認してください」と説明する予定とのことである。
  
マイナポータルについて
 10月中旬より、患者のマイナポータル(個人の私書箱のようなもの)にて、レセプトに表記されている患者の処方情報が閲覧可能となる。複数の医療機関に受診している患者の場合は全医療機関の処方内容が閲覧可能となる。
 11月からは医療費通知も閲覧が可能になる。毎月、情報が更新されていく。

本格運用の定義
 「保険証とシステムとで情報が異なった場合に、システム上の情報が正しいと判断すること」と説明している。
 

厚労省の感染情報の周知を要請
オンライン資格確認等システム 10月本格運用というが・・
カードリーダー申請機関の参加は、10月以降も任意時期でOK

埼玉保険医新聞 9月5日号
◆ カードリーダー申請機関がオンライン資格確認等システムに参加するのは任意の時期(2023年迄)で可
 協会は、オンライン資格確認等システム(以下、OLシステム)の関連で8月30日に厚労省に要請書を提出した。
 先月号でも関連の情報をお知らせしながら、同システムへの参加について当面は「様子見」とすることを推奨した。カードリーダーを申請している会員で記事を見たとして「カードリーダーの取り下げ」について相談が寄せられた他、「カードリーダー申請をしている医療機関は10月には、マイナンバーカードで受診をした患者には対応しなければならない」と受け止めている相談も寄せられた。

 厚労省は10月を本格運用時期と位置づけ、メディアで「10月迄に医療機関の準備は間に合うのか」と医療機関の不信を煽る記事を見かけることもある。
 しかし、協会が厚労省等に確認したところ、①CRを申請した医療機関がシステムに参加するのは十月を過ぎても問題ない、②機器設置等の補助金を得るためには2023年3月迄に参加をすればよい、とのことである。CRを申請した医療機関に患者がマイナンバーカードを持参した場合でも「まだ導入していない」として従来通り被保険者証によって資格確認をすることで問題ない。
 現在、医療機関における最優先課題は新型コロナへの対応であるが、厚労省も立場は同様のはずである。この渦中においてOL資格確認等システムの導入を優先させる道理はない。2023年迄の期間で導入できそうな余裕がある時に検討することで十分である。
 そもそも3月からの本格稼働を延期した際に「プレ運用」の参加機関を引き続き募集するとし、本格稼働の時期などを明言してこなかったことにより不明瞭になってきた。カードリーダーを申請した医療機関でも、10月からマイナンバーカードを持参している患者に対応をしなくともよいことを、厚労省の責任において周知案内をすべきである。残念ながら厚労省や支払基金等の資料や広報において、明瞭にOL資格確認等システムへの説明時期が医療機関の任意で構わないことを解説しているものは8月段階では見かけていない。

 協会が厚労省に対して要請したのは次のとおりである。
 

マイナンバーカードのオンライン資格確認等システムにかかる
近況と「デジタルヘルス集中改革」

埼玉保険医新聞 2021年8月5日号より
 7月9日、厚労省は「オンライン資格確認等システム集中導入宣言」のWEB説明会を開催した。
 10月の本格稼働までに多くの医療機関にシステムへの参加を呼び掛ける内容で質疑応答も交えて約1時間行われた。本号ではシステムに関する状況等を紹介するとともに、協会からは従前どおり申請は慌てず「当面は様子見」を推奨することを周知する。ご意見等は編集部まで寄せられたい

◆ 計画修正を検討しない政府
 マイナンバーカード(以下、MNC)のオンライン資格確認等システム(以下、OLシステム)は、今年3月からの本格稼働が予定されていたものの、政府の準備不足により10月まで延期がされている。
 菅政権のデジタル関連推進施策の一つが、同システムであり、昨秋から3月まで「加速化プラン」として追加補助金を講じるなどしてカードリーダー(以下CR)の申請を強く医療機関・薬局に呼びかけてきたことはご承知のとおりである。会員にも業者からの勧誘などがあったと思われる。これによりCRの申請件数が伸びたのは確かである。
 同システムに関する政府計画は、本格稼働は半年延期して今年10月から、2025年3月にはほぼ全医療機関を同システムに参加させていくというものである。本格稼働は延期したものの、その後の計画の修正をせず強行姿勢を変えないままだ。また、被保険者証に新たに付された2桁の枝番のレセプト表記も10月提出分(9月診療分)から必要とされるなど連動する他、被保険者証によるオンライン資格確認も始められる。
 見過ごせないのは「デジタルヘルス改革」と称して、患者の医療情報を集約し、マイナンバーの「マイナポータル」(個人の私書箱のようなもの)にて患者の閲覧を可能としつつ、この情報と同システムを連動させる計画工程が骨太方針で決定済みになっていることだ。
 同システムでは、今年10月からは薬剤処方の内容を閲覧可能とする予定になっている。これに留まらず2022年夏には手術歴、透析歴、医学管理の情報が、2024年4月からは電子カルテ情報の傷病名、検査結果、画像情報等にまで広げていく工程計画がまとめられている。患者同意が前提となるが、これらの情報を全国の医療機関で共有する想定である。

●表3 2021年6月4日厚労省データヘルス改革推進本部資料より
●表4 2021年6月4日厚労省「データヘルス改革に関する工程表」より

10月からの本格稼働は延期を

◆ 今のままでは医療機関の負担が大きい
 客観的な情報が医療機関に周知不足のまま十月からOLシステムの本格稼働がされようとしている。CRの申請をした医療機関は、現在「プレ運用」への参加が求められているが、十月になれば機器や通信環境が整い次第システムへ参加することが求められている。
 しかし、ごく少数のMNC持参者のために、慣れない機器操作等をスタッフとともに対応していくことはメリットより負担の方がはるかに大きいといえる。
 新型コロナに対して様々な対応が求められている中で、システム稼働時期に利用患者がこれだけ少ないことがわかっていれば、CRの申請を急ぐ医療機関は少なくなかったであろう。

◆ 客観情報を知らしめない政府
 今回のように制度の根幹を変更させる大規模なシステム変更では事前調査で得られた結果は、医療界のみならず、保険者や自治体等にも広く周知したうえで、本格的な導入を進めていくことが常識であろう。
 厚労省の説明会では、「医療機関向けポータルサイト」に、「プレ運用」に参加した医療機関の導入例が紹介されているとしていた。しかし、ここで紹介されているのは導入者の感想や印象がほとんどで、そもそも同システムに関心が高かった医療機関ばかりである。客観情報や導入後に役立つ事例の周知にはあたらないであろう。

◆ 本格稼働は少なくも延期を
 既にCRを申請している医療機関にとっても、「プレ運用」への参加や、10月から本格稼働への対応を困難と捉えている医療機関も少なくないであろう。政府・厚労省の導入工程は性急すぎる。現状では少なくとも本格稼働の延期が必要である。
 これまでにCR申請をしていない医療機関においては、当面は「様子見対応」をすることを強く推奨する。

コロナ禍で工程作成した政府

◆ 医療界も国民にもコンセンサスなし
 特定健診情報、レセプト情報、電子カルテ情報などから、マイナンバーのマイナポータルに患者の健康・医療情報が随時蓄積し、OLシステムと連動させて、医療機関においても同一内容の閲覧を可能とすることが骨太方針にて決定し、工程の徹底が強調されている。
 医療業界内に工程の内容に関する説明はほぼ皆無であるが、処方歴、健康診断情報、などは2021年度から始められる。この情報は患者自身はいつでも閲覧が可能である一方、患者がマイナンバーカードにより受診した場合には、医療機関側(患者の同意が必要)も閲覧が可能になっている(表4)。
 マイナポータルへの集積情報は、2024年には傷病名や検査結果、画像データなどまで含まれるとしている。平行して電子カルテ規格の統一化も進めるとしており、カルテ情報の多くがマイナポータルに登録化されることは、今後様々な問題として波及していくことが必至であろう。医療業界側で改めて検討が必要になっている。
 マイナンバーカードのOLシステムの導入は、患者の医療情報を全国で共通利用する計画の端緒にすぎないが、参画医療機関の多寡によっては工程の進捗にも影響が及んでいくのは間違いない。会員医療機関においては、慎重、着実に検討されたい。
 

ずさんで無責任な導入計画が露呈
オンライン資格確認の本格稼働は延期に

埼玉保険医新聞 4月5日号
 3月下旬よりマイナンバーカードによるオンライン資格確認が本格稼働することになっていたが、3月26日に田村厚労大臣は記者会見にて「本格実施は10月をめどとする」と表明した。
 骨太方針の既定スケジュールである今年3月からの稼働に向け、菅政権は昨秋以降「加速化プラン」として医療機関への補助金率の引き上げを講じたが計画行程に無理があったことが露呈した格好だ。
 延期の理由として「登録データの不備」などをあげているが、これらはオンラインによるデータ照合以前の問題であり早期から把握されてしかるべき事案だ。3月中も政府広報で「マイナンバーカードは保険証としても利用できる」と大宣伝を続けたシステムを突如延期とした判断理由は曖昧である。政府、厚労省は国民や医療機関に対して「延期」について正式な広報をすべきである。
 延期に伴いこれまでカードリーダーを申請してきた医療機関からのキャンセル等には柔軟に対応すべきである。また、医療機関におけるガイドラインが未定なまま等本格稼働までに課題の解消も求められている。なお加速化プランは3月末をもって終了される。
 協会では理事長談話「マイナンバーカードのオンライン資格確認等システム当面延期について~強引な施行計画の再考を求めます」を発表した。

プレ運用は埼玉ゼロ
 本紙3月号でも既報のとおり、マイナンバーカードのカードリーダーを申請する医療機関数は全国的に低調なことに加え、厚労省は本格稼働の当月上旬から「プレ運用」なるパイロット運用を予定するという、無謀な計画を立てていた。
 「プレ運用」には全国で500近くの医療機関や調剤薬局から手が上がったと厚労省は発表してきたが、3月26日の段階の発表で、医科医療機関で35件(このうち病院が22件、診療所が13件)、歯科医療機関で22件に過ぎないことが判明。埼玉県内の医療機関は、ゼロ件という状況であった(表 「プレ運用」全国参加医療機関等リスト)。本格稼働の時期である3月下旬となっても「プレ運用」すら稼働ができない状態になっている状態が示された。
 協会ではカードリーダーの無償提供や補助金は2023年まで申請が認められており、「当面は様子見」を推奨してきた。会員からは「慌てて申請しない方がよいことを実感した」との意見も寄せられている。

本格稼働の延期とする理由
 厚労大臣の記者会見に先だち、3月25日からNHKをはじめ一般ニュースとして「マイナンバーカードの保険証化延期に」などと報じられることとなった。厚労省の発表では、データ様式の違いから被保険者番号が正確に入力されていないケースが3000件、保険証の情報が登録されていないケースが6万3000件、海外在住などで健保組合に個人番号を提出しないために登録できないケースも175万件としている。これらを3月下旬まで発表できなかったとは大変にお粗末だ。システムに必要なパソコンの供給が間に合わなかったことなども報じられている。
 本格稼働後には「マイナポータル」(各個人の情報ウェブサイト)に自身の健康情報や薬歴等が表示されるサービスも5月より開始される予定であった。しかし、各個人の番号の誤入力などがあると、他人の情報が表示される恐れもあるとのことで、この情報表示についても延期することが発表された。

無責任なプレ運用期間を延長
 田村厚労大臣は、会見の中で「プレ運用期間を延長する」とした。厚労省の発表では10万件程度までプレ運用の機関を増やすとしているが、これは、全体の機関数の約50%である。希望的な観測として掲げているとすれば無責任な発表だ。この規模に対象を広げるならば「プレ運用」と称するには多すぎる。

初期化はカード所持者の九%のみ
 マイナンバーカード申請者のうち、健康保険証として利用するためには「利用登録」(初期化)が必要であるが、済まされているのは8.9%にすぎないことも発表された。
 
■埼玉保険医新聞 2021年3月5日号より

稼働目前のオンライン資格確認システム
「保険証による受診の勧奨」を保険者・行政に要請

 協会は、大半の医療機関でオンライン資格確認のカードリーダーが未設置状況であることから、本格システム稼働が迫る2月下旬から3月上旬に、県内の保険者団体(健保連、協会けんぽ、国保連合会、後期高齢者広域連合等)や行政に対して「被保険者に対し、被保険者証による受診の勧奨」を求める要請を実施した。

 マイナンバーカードによるオンライン資格確認システムは、3月4日より全国で500医療機関を対象としてプレ運用が行われ、3月22日より全国で一斉に開始するという計画である。
 しかしながら、マイナンバーカード(MNC)のカードリーダー(CR)を申請している医療機関の割合は、2月7日の厚労省発表で全国的には医科診療所21.0%、歯科診療所23.3%、病院38.0%、埼玉県内では医科診療所20.2%、歯科診療所では15.3%、病院30.3%(表1)である。CRの設置数はさらに少ないことが見込まれる。システム稼働の目前にありながら県民がMNCで受診できる体制は明らかに整っていない。

 2月12日の社会保障審議会(医療保険部会)では、健康保険組合連合会副会長から、患者が受診時に混乱をきたすことを危惧し、「当面は既存の健康保険証を利用することが最も確実な方法などを患者に周知せざるを得ない」と述べ、政府に対し国民に誤解を与えない周知・広報を求めたことが報じられている。
 患者が3月下旬からMNCで受診・来院しても、ほとんどの医療機関にCRが設置していない状況では、各地で混乱やトラブルが生じることは必至である。医療機関は病院も診療所もCOVID-19に全力で対応中であり、CR未設置の医療機関がMNCを持参した患者に「資格確認ができない」ことを説明していくことは困難である。
 そもそも、3月から全国で一斉に稼働させるシステムについて同月の上旬に「プレ運用」を実施するという政府の導入工程自体が常軌を逸している(表2)。コロナワクチンの接種準備においても各自治体が様々な現場試行を実施し、本番に備えていくのと同様に、MNCのオンライン資格確認もプレ運用を経て、全国導入の本番に備えていくべきである。
 協会は保険者や行政から被保険者に対し「3月以降も被保険者証により受診ができる」「MNCでは資格確認ができない医療機関の方が圧倒的に多いこと」等を周知することが混乱を防ぐ確実な手立てであるとした他、トラブル発生時のコールセンターの設置と周知について求めた。
 協会からの要請に対して、いずれの保険者もコロナ禍においてCR設置が進んでいない現状や、混乱回避のために周知することについては理解が示されたものの、県独自に対応することは困難であるとした。政府は至急に混乱が生じないよう対策を講じるべきである。

 要望事項
1 以下について広報への掲載のみならず、個別通知等により被保険者に周知してください。
(1)3月以降も被保険者証で受診できること
(2)MNCのCRを設置している医療機関の割合は低いこと
(3)CRを設置していない医療機関では、MNCを持参して受診をしても資格確認ができないため、被保険者証の提示が必要であること。
2 医療機関が患者に説明をしてもMNCのみを持参し被保険者証の提示に承諾しない場合などに対応するために、貴職の相談窓口を設けて相談電話番号などを当方はじめ、医療機関に対して周知してください。
 
●表1 オンライン資格確認カードリーダー
 申請割合と件数(21年2月7日時点)
 社会保障審議会医療保険部会(2月12日)資料より協会で編集
 
●表2 オンライン資格確認システム利用開始までのスケジュール
 

「マイナンバーカードによるオンライン資格確認に関するアンケート」の集計結果を発表しました。

2020年9月3日
◎7月に「オンライン資格確認導入に向けたご案内」リーフレットが、全医療機関に届けられ、資格確認のために使用する、マイナンバーカードのカードリーダーを政府が無料配布をすること等、医療機関のメリットが紹介されました。

◎「オンライン資格確認」システムが政府から医療機関に本格的に紹介されるのは今回が初めてですが、リーフレットでは、記述が不足がちなためさまざまな困惑、躊躇する声が本会に寄せられました。

◎協会では、リーフレットがいきわたり対応を検討している時期である8月上旬に、開業医会員を対象にアンケート調査を実施しました。ご協力をいだきました皆様方に感謝申し上げます。

◎協会では、本アンケートで寄せられた医療現場の意見・要望を踏まえ、関連する情報の提供等を、政府に求めていく予定です。

◇ マイナンバーカードによるオンライン資格確認に関するアンケートの集計結果(PDF)
 

◆◆カードリーダー申請 わずか医科診療所9.0% 歯科診療所13.6%

(埼玉保険医新聞11月5日号)

 マイナンバーカードの普及数が伸びない状況を受け、政府は新たに自動車運転免許証との連結、一体化などについても方針を固めたことが報じられている。早ければ2026年に実施とされている。
 保険証化も推進がされているが、10月14日の厚労省の審議会でオンライン資格確認のカードリーダー申請状況が初めて報告された。医科診療所9.0%、病院11.6%、歯科診療所13.6%といずれもわずか1割前後でしかなかった(表)。来年3月からシステムを開始する予定で進めているが、少数の医療機関でスタートせざるをえない状況が判明した。
 また申請した医療機関が電子情報を取扱うための「ガイドライン」「規程案」が十月になりようやく示されたが、肝心のマイナンバーカードを取扱うためのガイドラインは未公表のままである。政府は申請数が少数となっている状況を深刻に受け止めており、レセコンメーカーや医療団体等に対して医療機関へ申請させるよう働きかけを行うこととしている。

申請は様子見を 取り下げも可能
 施行スケジュールの見直しも求められかねない状況になったオンライン資格確認であるが、協会では引き続きカードリーダー申請については「様子見」を推奨することとしている。既に申請をしている場合の「取り下げ」もまだ可能な時期である。詳細については「医療機関等向けポータルサイト」または協会までお問い合わせをいただきたい。政府は資格確認システム導入に伴う医療データの取扱い方や電子カルテの標準化についての議論も行っているが、政策には医療現場の声を反映することが求められている。

(表)オンライン資格確認のカードリーダー申請割合
   20年8月7日受付開始~10月11日時点
 
 (件数)
※社会保障審議会医療保険部会(10月14日)資料より協会で編集
 

◆◆オンライン資格確認「システム」への対応

◇申請数は少なく政府は焦り
 システムスタートまでの日程が4カ月を切った段階で、医療機関のカードリーダーの申請数が一割程度と判明した10月14日の社会保障審議会医療保険部会では、「課題」と「これからの対応」などの議論がされている。
 「課題」として①情報の周知不足、②様子見の状況、③新型コロナウイルスの影響、があげられている。協会の会員アンケート結果が示した内容と同じ課題であり、カードリーダーの申請が進んでいないことを政府が認めた格好である。
 「これからの対応」として公的病院への働きかけや、医師会、歯科医師会への働きかけ、業者への働きかけなどをあげている。現時点で医療現場にとって利益に映らないシステムの導入を医療団体が会員に呼びかける事態は少ないであろう。行政、支払基金等や業者からの勧誘が強化されてくることが予測される。

◇レセコンメーカーから申請を奨められたが…
 協会には会員から「レセコンメーカーにカードリーダーの申請を奨められている」と困惑しているとの相談が寄せられている。
 前月号までに紹介しているが、カードリーダーに係る費用やオンライン環境の整備に係る補助金は2023年まで申請が可能であり、早急に判断するなど焦る必要はない。そもそものマイナンバーカードの普及状況は現在でも2割台にとどまっており、圧倒的多くの患者は現在の被保険者証で受診することが見込まれている。
 業者の奨めに従い早期に導入するメリットはほとんどないといえよう。

◆◆申請した医療機関向けのガイドライン

◇繊細な患者情報の扱いを想定
 10月に厚労省は、「オンライン資格確認等、レセプトのオンライン請求及び健保組合に対する社会保険手続きに係る電子申請システムに係るセキュリティに関するガイドライン」と「安全対策の規程例」を公表した。
 「オンライン資格確認システム」と称され推進されているが、システムはレセプト請求を取扱う機能と同時に、患者の薬剤情報閲覧機能、特定健診情報閲覧機能の取扱い事業者になることが求められる。特に後者の医療情報は、経年的に拡張していくことが計画され、手術歴や傷病名、実施医療機関名などまで検討にあげられているが、広く周知がされていない。カードーリーダーの申請により、これらの取扱い事業者に組み込まれていくことが見込まれている。
 今回厚労省が示したガイドラインや規程例の中には「オンライン資格確認等システムは、患者の資格情報等といった慎重な取扱いを要するため、安全性の高いセキュリティ対策を講じる必要がある」などと説明があり、電子データを取扱うための管理責任、情報管理の責任、機器本体の管理責任、人員体制の管理責任などの定めと、各医療機関において取扱い規程を定めることを求めている。
 これまでも電子カルテを取り扱うにあたっては「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」が示されているが、そうした既述のものも含み多くのガイドラインに沿った対応を求めている。

マイナンバーカードの取扱いガイドライン
 膨大な分量が示されているものの、「マイナンバーカード」を医療機関が取扱うためのガイドラインはこの中に含まれていない。今後、追加されると思われる。

●政府の掲げる オンライン資格確認の目標と課題、これから
 

◆◆オンライン資格確認に関する続報

 (埼玉保険医新聞10月5日号)

 先月、先々月とマイナンバーカードの保険証化とオンライン資格確認の状況を報じてきた。会員アンケート結果で半数が申請せず「様子を見ていく」と回答している状況を伝えている。今月号では年代と現在のレセプト請求状況ごとの申請意向を別表のとおり紹介する。

表“当面は様子見”は世代やレセプト請求方法問わず
 
◆カードリーダーの取り消しは無償で簡単
 「既にカードリーダーの申請をしたが、当面は様子見にしたい。申請の取り消しはできるか。それとも、機器の実費代の10万円相当を支払わなければならないのか」との照会が協会に寄せられた。
 前号で報じたとおりカードリーダーの提供を受けてマイナンバーカードに対応しなければ、実費(10万円相当)の返還が必要となる。しかし、現在は申請の時期であり、カードリーダーが提供されているわけではない。無償で申請の取り消しは可能である。
 取り消し方法は簡単だ。申請をしたポータルサイトの申請ページで申込台数を「0台」、メーカー名は「???」とすれば良いだけである。
 出荷が最も早いメーカーは「アルメックス」で12月末頃からの配送とされており、ポータルサイトによれば1カ月前であれば変更可能とある。申請取り消しを行いたい場合は早めに手続きをされたい。

◇ ご存じですか? 「顔認証付カードリーダー」のこと (20年10月埼玉保険医新聞 PDF)

◆◆「オンライン資格確認」当面は様子見が半数

 (埼玉保険医新聞9月5日号)

 協会が8月上旬に実施した「マイナンバーカードによる『オンライン資格確認』に関する会員アンケート」の集計がまとまった。
 マイナンバーカードのカードリーダーの申請について、「当面見送る」との回答は医科歯科とも半数で、「申請しない」と合わせると、医科で63%、歯科で75%が申請に前向きでないことが判明。その理由について医科72%、歯科68% が「わからないことが多い」と回答した。「申請する」は医科で20%、歯科で10% だった。
 

◆◆どうするオンライン資格確認(続編)
マイナンバーカードリーダー「申請する」は少数
情報が少なく困惑者多数

 (埼玉保険医新聞9月5日号)

 来年3月から導入される「オンライン資格確認」であるが、七月に政府から全医療機関に宛てたリーフレットには医療機関のメリットと申請を急がす記述が目につき、システムのデメリットや導入を判断するための情報が書かれていなかった。
 こうした情報提供の在り方が、申請を検討するうえで「わからないことが多い」とする回答が多数になったとみられる。
 「現在の電子カルテとの連動が確認できていない」(内科・60代)、「メリットが多ければ行う予定」(内科・60代)、「説明がほとんどなく、中途半端な作業になるのは困る」(歯科・六〇代)、「もう少し情報を得たい」(内科・70代)などの追加情報を求める声は多い。
 「マインナンバーカードを持っている人が少ない。最初は不備が多くなりそう」(歯科・40代)、「高齢の患者にはわかりにくいからやめてほしい」(歯科・40代)など、マイナンバーカードの普及状況や、システムが定着するまでの患者への説明の難しさを懸念する声も寄せられた。また「申請をしない」理由として「コロナ対策で余裕がない」(整形外科・40代)との意見もあった。
 一方で「申請する」とした回答者があげたその理由は「無料で提供されるから」が医科46%、歯科47%と多く、カードリーダーが無料提供されることが大きな判断要素にあげられている。また、カードリーダーの取り扱いガイドラインなど医療機関の実務上の義務事項が今後示された場合に、「順守できるか」との問いには「見てみないとわからない」が医科59%、歯科47%であった。
 
◇オンライン資格確認のメリット オンライン資格確認のデメリット
 それぞれの回答結果は表のとおりである。
 本アンケートの回答傾向は医科、歯科とも同様であった。現段階では医療界全体が情報不足の状況にあることが所以かもしれない。
 メリットと思われるものでは最多は「返戻がなくなる」で医科62%、歯科60%、二番目が「保険証の入力をしなくてよい」が医科51%、歯科56%、三番目が「処方履歴の閲覧可能」で医科43%、歯科35%の回答が寄せられた。
 デメリットと思われるものでは最多は「費用がかかる」で医科61%、歯科65%、二番目が「一般の健康保険証とマイナンバーカードとどちらにも対応しなければならない」が医科56%、歯科58%、三番目、四番目は「紛失盗難などへの責任の大きさ」「職員教育」が続いている。
 
◇全般の単純回答
 今回が初めて実施した、オンライン資格確認に関する会員アンケートであり、そもそも「資格確認がオンラインでできるようになること」についての設問を設けた。
 医科歯科とも四割弱が「知っている」と回答している。
 また、オンライン資格確認の導入は義務でなく任意であることについては、医科38%、歯科27%が「知っている」と回答した。
 今後も保険証の目視確認の方法が可能であることについても、医科46%、歯科36%が「知っている」と回答している。
 オンライン資格確認は、マイナンバーカードに依らず、保険証で行えることについて医科39%、歯科30%が「知っている」と回答している。

◇リーフに未記載事項
 申請期限が3年先まであることを「知っている」は医科14%、歯科14%と少数であった。導入の検討にあたり、機器や補助金の申請できる期限は重要な検討材料であるが、リーフレットに記載されていないために知られていないことが判明している。
 導入時以降の機器交換や維持費用については医療機関に負担が生じることについて、「知っている」は医科14%、歯科14%であった。リーフリットに全く触れられていない事由は認知されていない。
 今後、マインナンバーカードの取扱いが、保険証の資格確認に関わる事項であり、個別指導の指摘事項等に加えられる(療養担当規則に掲げられる)可能性についての設問では、「知らない」が医科62%、歯科64%で、「詳しくは知らない」と合わせると医科歯科とも95%以上に知られていないことが示された。
 アンケートには多くのフリーアンサーが寄せられた。設問を掛け合わせた集計結果等については次月号以降に紹介していく予定である。

◆◆会員アンケートで寄せられた質問意見に応えて

 先月号でオンライン資格確認について「申請は任意」「当面は様子見」と呼びかけたところである。別記の会員アンケートでは、様々なご意見や疑問、質問等が寄せられたが、現在、支払基金サイトや政府等の動きから可能な範囲で解説したい。申請については、当面様子をみていくことを推奨する。

◇取り合えず申請しておくことはダメ
 アンケートで「申請する」とした回答者が挙げた理由で最も多かったのが「無料で提供されるから」であった。
 判断材料の少ない状況では、無料提供であり、とりあえず申請しておくことを考える方も少なくないかと思われる。医療機関に送られたリーフ
 レットでは、そのことが否定されていた訳ではなかった。しかし、8月7日付けで、支払基金が運営する「オンライン資格確認・医療情報化支援基金関係医療機関等向けポータルサイト」に重要事項が周知されている。
 「また、顔認証付きカードリーダーの提供を受けたにもかかわらず、結果として、オンライン資格確認を導入しなかった場合、顔認証付きカードリーダーの費用相当額を返還いただくこととなりますのでご承知の上、お申し込みいただきますよう、お願いします」と掲載されたのである。
 要するにカードリーダーの提供を受けた場合には、必ず、マイナンバーカードに対応せよ、さもなければ、実費(約10万円)を返還せよ、ということであるので注意されたい。
 本来このような重要説明はリーフレット上に記載がされておくべきであり、「取り合えず申請」は返金の可能性があることを医療機関に説明されるべきである。

◇保険証情報の入力は不か?
 リーフレットでは、カードリーダーを使用すれば、保険証情報が自動取得され、レセコンや電子カルテへ保険証情報の入力がなくなるとの説明がされている。
 アンケートでもマイナンバーカードによる「オンライン資格確認」のメリットの二番目に「保険証への入力をしなくてよい」が挙げられている。
 この点については、各医療機関で使用しているレセコンや電子カルテの確認が必要だ。全ての機器で入力が省けるとは限らないようである。カードリーダーに保険証情報が表記されても、レセコンや電子カルテと連動していなければ情報は転送されない。現段階では多くの機器が後者であり、入力は従前同様に必要になろう。

◇返戻がなくなるのか?
 アンケートではメリットのトップが「返戻がなくなる」が挙げられている。実は、リーフレットでは、資格過誤による返戻レセプトが「削減」とあるものの、「なくなる」と保証はしていない。
 これは最終的には、医療機関における事務実務に由来することによる。オンラインで資格確認を実施して、資格過誤が判明するのは、保険証確認、すなわちマイナンバーカードをカードリーダーにかざして、オンラインが稼働している時のみである。
 患者がマイナンバーカードを持参しない場合や、現在多くの医療機関で実施する月に一度の資格確認のみでは、確実に資格過誤を発見することはできないことに注意が必要だ。


◇どうするオンライン資格確認(続編) マイナンバーカードリーダー「申請する」は少数情報が少なく困惑者多数(20年9月埼玉保険医新聞 PDF)

◇どうするオンライン資格確認 カードリーダー申請は“任意”当面は様子見で(20年8月埼玉保険医新聞 PDF)

Copyright © hokeni kyoukai. All rights reserved.

〒330-0074 埼玉県さいたま市浦和区北浦和4-2-2アンリツビル5F TEL:048-824-7130 FAX:048-824-7547