◆◆75歳以上窓口負担「2割」は見送りを ~コロナ禍の再考が必要~

埼玉保険医新聞12月5日号(一部修正)
 経済財政諮問会議や全世代型社会保障検討会議、厚労省の社会保障審議会で患者の窓口負担の引き上げが議論されている。何が何でも後期高齢者に「2割負担」を盛り込むべく、負担引き上げとする年収区分を五つに分けた試算がされている。12月上旬にも引き上げ案を確定させることを政府は予定しているが、審議会や各会議では医療界から出されている意見を傾聴する様子がない。
 保団連をはじめ、日医からは「コロナ禍を踏まえひとまず検討を凍結すべき」、日歯からは「受診抑制をさらに助長するような引き上げはこの時期に容認すべきではない」との意見が出されるなど、この時期に引き上げを議論することそのものに疑問が呈されている。
 患者負担の引き上げは受診控えに直結し、患者の健康に悪影響を及ぼすことも必至である。また、コロナ禍における負担増は医療崩壊に拍車をかける。将来の社会保障財源を案じたり、現役世代との負担の均衡を強調する議論もあるが、財務省が十月末に発表した「企業の内部留保」は過去最高を更新し、年間で約12兆円も増加している。
 高齢者の窓口負担の他、大病院に受診時の差額徴収などによる患者負担引き上げは、昨年までに政府が計画をたてているもので、政府、経団連などの経済界、与党が議論を進めている。一方で、政府は新型コロナウィルス感染症の感染拡大に対応する医療施策をこの半年間でほとんど講じていない状況であり、優先課題が逆になっているといえよう。
 協会は「患者負担引き上げ中止を求める請願署名」に取組中であるが、県内選出の国会議員のうちほとんどの野党議員には署名の賛同をいただき、紹介議員の引き受けをいただいた。
 埼玉県保険医協会では、患者負担増計画が掲載されている「クイズチラシ」を配布しながら、2割負担の問題を周知している。協会は来年も負担増中止を求めていく。

◆企業内部留保は過去最高475兆円に ~安倍政権下で171兆円増加~

 10月末に財務省が発表した法人企業統計調査によると、企業の蓄積を示す2019年度の「内部留保」(金融・保険業を除く)は475兆161億円だった。2018年度からの1年間で11兆8,853億円(2.6%)も増えた。過去最高の更新は8年連続。企業の好調な業績の一方、従業員への賃上げが不十分である。

 2012年度に安倍政権が発足して以来、2019年度までに内部留保は171兆円も増え、そのうち資本金10億円以上の企業が約95兆円の増加である(図)。
 政府や財務省は将来の財源不足を理由に社会保障や医療予算の削減、患者負担増を掲げている。
 安倍政権下の診療報酬は4回全てがマイナス改定であり、患者の窓口負担も増やされ続けている。現在は75歳の窓口負担の引き上げが議論されているが、負担や痛みを分かち合う先は他にあるといえる。
 単純な比較はできないが、1年間で約12兆円もの内部留保が増加しているのは政策の誤りといえよう。社会保障費の負担の分かち合いとして至急に適切な法人税課税等も行うことが必要だ。

◆既に十分高負担になっている高齢者

 高齢者は若年層に比して受診回数が多い。窓口負担割合の引き上げがもたらす負担感は、若年世代に比して格段に高まる。下図のとおり、既に高齢者は1人当たり医療費が高く、年収に対する患者一部負担の割合は既に十分に高くなっている。患者負担割合を1割から2割と2倍化すれば必ず受診控え、受診抑制が生じ、必要な医療の提供を妨げることにつながるのは確実である。
 少子高齢に伴う社会保障財源や医療費の在り方を国民的に議論していく必要性が強調されるが、新型コロナ禍の下であり、少なくも来年からの国会で国民的な議論を行う環境にはない。受診控えを引き起こす制度改悪の提案を強行するべきではない。

◆応能負担は「税」や「保険料」で

 そもそも収入や所得に応じた負担(応能負担)は、本来は保険料や税により求めていくべきである。患者一部負担により応能負担を求める方法は、医療機関における窓口実務を複雑にさせていき、受診における一部負担金の考え方を歪めていくことになる。
 協会・保団連では「負担増を中止する署名」や負担増計画を知らせるクイズチラシの配布活動に取り組み中であり、物品ツールの追加注文を受け付けている。多くの会員に本取り組みに協力をいただきたい。

1人あたり年間収入に対する患者一部負担の比率

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 ◇ クイズで考える私たちの医療 https://quiz.doc-net.or.jp/


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