声明・談話
年頭所感
参議院選挙で大敗した後、菅政権は臨時国会において、国会運営や時局判断で迷走し、昨年の総選挙時のマニフェストの不履行も目立ち、多くの国民が失望しています。政権の支持率は二〇%台という落ち込みです。民主党への期待が、裏切られた恰好となっていることがその要因と思われます。民主党は選挙のマニフェスト、生活者重視の原点に立ち返って、政権運営をしていただきたいと思います。
インターネットを媒介手段に、かつてでは考えられない程に国家の機密情報が流出する時代になりました。ウィキリークスが米国務省の秘密文書二五万点を暴露し、国内でも公安外事二課のテロに関する情報、尖閣諸島のビデオ映像などが流れました。いずれも厳重に管理されているはずの情報です。現在、政府では患者のレセプトデータ利活用、社会保障番号制度との連動などを推進中ですが、患者のプライバシー情報の流出は避けられない時代において、漏洩がもたらす被害への不安、我々医療機関に加害責任が及ぶ不安などを覚えるのは小生だけでしょうか。
我々開業医の経営は逼迫したままですが、その一方で政府は医療を「成長産業」と位置づけ、保険者機能の強化、レセプトデータの活用や、医療ツーリズムなど、医療を営利市場へ変質させかねない企みを着々と進めています。また混合診療の拡大も巧妙に検討がされています。
ペプチドワクチンを巡り、東大医科研の医師が臨床試験における有害事象を関係者に周知しなかったことが朝日新聞に報じられました。細目は当事者しか知る由もありませんが、臨床試験における有害事象は関係者の他、患者とも共有すべきです。原因が薬害なのか病気によるものかは、後に検証すればよいことです。医の倫理が問われる事象と思われます。
ナチス時代の医療を総括したドイツと異なり、日本の医学界は戦前の七三一部隊の医師による非人道的人体実験の総括が、未だできえていません。今回の問題は、東大医科研側の医師に非人道的体質が未だに継承されていることを窺わせます。
今回のペプチドワクチンの臨床試験においては、混合診療の疑いも報じられています。貧しい日本の新薬やワクチンの研究開発体制において、治療法が限られている患者の声を錦の御旗にして、臨床試験における混合診療を声高に叫ぶ医師も少なくありません。我々開業医が、個別指導で厳しく指摘を受ける一方で、大学や著名な医師が行う臨床試験ならルールを無視しても当然であるという傲慢な姿勢には大きな憤りを覚えます。
今年も、「三つの方針」を基礎に、これまでの運動の教訓に学び、真摯に開業保険医の団体結成の原点を踏まえ、開業保険医の経営と権利の擁護の運動に邁進する所存です。
市民らと共に、患者の窓口負担軽減や、受診中断の実態を社会に訴える取り組みなども一層推し進めていきます。会員諸氏の協会運動へのさらなる参加を期待します。
二〇一一年元旦
埼玉県保険医協会
理事長 青山邦夫
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